歯科医院長mabo400のブログ

外傷性の虫歯6.01(歯根面・隣接面カリエスの生成理論)

2019/12/20
 
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9歳男子、左下6、隣接面カリエス 003990

乳歯が抜けたら、虫歯が見つかったというよくある症例です。
隣接面の虫歯の原因はよく分かっていません。隣接面はプラークで汚れやすいとか、その程度です。だからどうしたの?というとプラークは糖質を摂取すると酸性になりやすいので、その酸で歯が溶けるのだと思われている。しかし実はそう簡単な話ではない。プラーク中の酸性度はpH4.5程度であり、その程度では歯は溶けない。それより水素イオン濃度が30倍も高いpH3の炭酸飲料に漬け込んでも1ヶ月位では溶けてなくなったりはしない。意外に歯は酸には強いのだ。

しかし電気化学説で考えるともっと詳細に納得のいくように説明出来る。

虫歯の電気化学説では細菌の出す酸で溶けるという単純なものではなく、水素イオン(酸性)は歯質を電導するという意味では必要なのですが、水素イオンの存在だけでは不十分で水素イオンを動かすための起電力がさらに必要なのです。

口腔内での起電力として普通に存在しうるものに2つあり、1つは自然電位とかイオン化傾向とか言われる2つ以上の金属もしくはイオン電導性物質間に生じる起電力と、二つ目は酸素濃度差電池に代表される媒質の濃度差に起因する起電力があります。

一本の歯でも手前側と奥側では奥側の方が酸素濃度は低いので、低い奥の方に向かって水素イオンは歯質内を電導して奥側の面(遠心隣接面)から外に出る。出るときに歯質の構成要素のカルシウムから電子を奪い(イオン化傾向の違いによる)水素イオンは水素ガスとなりカルシウムはカルシウムイオンとなり歯質から溶出するこれが虫歯だ。一本の歯でも遠心面の方が虫歯になりやすいのは歯科医師はよく経験しているはずだ。

前回の続き

http://mabo400dc.com/dental-treatment/electrochemistry/外傷性の虫歯6(歯根面・隣接面カリエスの生成理/

表題画像はエナメル質と象牙質間の自然電位がエナメル質の方がわずかに低い(ー電位)というのと、酸素濃度がクラックや虫歯の穴の中の方、もちろん歯磨きが十分でなくプラークに覆われていれば、そこが酸素濃度はそれ以外の部分に比べて低くく、その部分から水素イオン(H+)を放出するという2つの起電力が相乗的に働き、水素イオンは周辺部から歯牙に吸い込まれ、クラックや虫歯の内部から出て行こうとする。

虫歯の拡大画像だが、そのことが理解できると思う。穴の内部だけが溶けて、周囲のエナメル質は意外に全く溶けない。酸で溶けるのなら両方溶けるはずだ。これはエナメル質と象牙質のイオン化傾向が異なり別々の電極になっていると考えれば、容易に理解できるはずだ。

水素イオン(H+)が歯質外に出て行こうとするときに、イオン化傾向がカルシウム(Ca)の方が大きいので、電子を置換し、水素イオンは水素ガスとなりカルシウムはカルシウムイオン(Ca2+)となり、溶出する。それが虫歯だ。

2H+ + Ca → H2↑+ Ca2+

歯牙はハイドロキシアパタイト(HA)が主成分で、リン酸、カルシウム、OHの結晶だが、八雲・藤森氏の研究によると、OHがH+の電導性を担うことが明らかになっていて、H+がCaから電子を奪うとCa2+となって溶出する。これはHAの結晶が崩壊するということであり、要するにこれが虫歯ということだ。

ここからは虫歯の治療になるのだが、エネメル質だけではなく、象牙質にも接着面積を確保するためにエネメル質に接している部分の軟化象牙質を除去しているところだが、象牙質の深部まで虫歯が広がっているのが判ると思う。エネメル質の欠損は少ないが象牙質中のHAは深部まで溶けて消失している。

これは虫歯菌の出す酸で溶けたものが虫歯だというのは無理がある。虫歯の深部には細菌はほとんどいない。そんなところでは細菌とは言え、生きてはいけないのだ。

エネメル質に接触している象牙質はボンディング材の接着力を確保するために健全歯質を確保するが、中心部の虫歯は追求する必要はない。

α-TCPセメントで覆とうし

CRで修復する

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Comment

  1. ひろ より:

    この状態ですと重層うがいでは厳しいでしょうか。

    大人の場合には穴は空かずに隣接面(歯根面ではない)の一部が真っ黒になっているものもありますが、FeSで黒くなっているのでしょうか。

  2. mabo400 より:

    厳しいでしょう。そもそもこうなる子は重曹うがいとか真面目にやっていません。

    そうです。クラック(少しは虫歯もある)内部にFeSが沈着しています。

    • ひろ より:

      クラック内部にFeSが沈着してるのですね。
      表面だけ黒くて中が黒く透けないものは、象牙質内で広がっていないように感じます。
      FeSの虫歯は進行しにくいようですが、これもクラックが原因なのですね。

      クラックを事前に見つけた場合、対処の方法はあるのでしょうか。

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