歯科医院長mabo400のブログ

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外傷性の虫歯6

 
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20代男性、左上6、遠心隣接面カリエス、時々痛い 001888

近くの歯医者さんで神経を取るしかないと言われたのでうちに来た。

比較的若い子の外傷性のカリエスは遠心隣接面から始まることが多い。
食いしばり傾向のある子に見られる。
歯を食いしばって勉強やスポーツを頑張る子だ。

この子のお父さんも食いしばり傾向があるので、やはり親子は似なくても良いところも似てしまうのかもしれない。

・・食いしばることで隣接面同士押し合ってクラックが入る。1つの歯でも遠心の方が酸素濃度が低いので、同じ隙間腐食とは言え、遠心の方が酸素濃度差腐食が起こりやすい。これが虫歯の電気化学説による解釈だが、既存の知見では虫歯の原因すら分かっていないのだ。少なくとも酸で歯が溶けると言った単純なものではない。炭酸飲料を口の中に1ヶ月以上も含んでいることなんて出来やしないからだ。

レントゲン写真を見るとCR充填を試みたようにも見えるが、黒く写っている虫歯は残っている。

とりあえず、セメントやCRを除去してみることにした。
このサイトは一般の人には難し過ぎるというか、単にこんなものなのだろうなと思うだけだろうが、多くの歯科医師にはどうやってするのか解らないかもしれない。所詮臼歯部隣接面のCR充塡など上手くいかない。適当にしておいて痛くなったら神経を取ろうと考える歯科医師も多いだろう。しかし術式は画像で完全公開しているのだし、神経を取らないでも痛みは一瞬で治る長期的に安定なCR充塡もやってできないことはないということは分かるはずだ。

他人がした治療というのはよく分からないので慎重に進めるしかない。
一般の方は、治療法が同じなら、どこの歯医者でも同じ治療が受けられると思われるかもしれないが、そのようなことは全くない。術者の技術レベルはもちろんだが、術者のその時の気分にも左右されるデリケートなものだ。一瞬の気の迷いというか雑念が失敗の原因になる

セメントはユージノール系で丁子の匂いから比較的新しいものだということが分かる。
ユージノールはレジンの重合阻害剤なのでCR充塡の時には使わないのがセオリーのはずだが、痛いので鎮静作用のあるユージノールセメントを使ったのだろう。
まぁ、最初から上手くいくはずのないものだ。しかもCRも上の方だけで内部はセメントだけだ、これもCR充塡をしたとは言えない

セメントとCRを除去したが、軟化象牙質(虫歯)も広範囲に残っていたので除去した。虫歯にはボンディングが効かないので辺縁封鎖性は保たれない。痛みが治まらないのは当然だ。イオンの出入りを封鎖しないと痛みは治まらない。

前医が神経を取るしかないというのは上手く言っているはずもないことをよく解っているからだ。

接着マージンは新鮮象牙質を1mmの幅で確保しておく必要がある。
除去中に歯肉縁を触ってしまったので出血した。ほとんど直視下では見えないので、こういうことはある。止血待ちには時間がかかるし、一般的にはチェアタイムをなるべく短くしないと経営的には厳しいのだが、難易度の高いCR充塡は全くそれに逆行する治療法だ。

このようなCRの難症例では1時間前後を要することもあるので、保険診療では難しい。保険では3,000円程しか請求できないので、スタッフの時給すら出ないことになる。昭和40年の健保に歯科が導入された頃の値段がそのまま物価スライドせずに引き継がれているからだろう。世界標準の1/10の値段だ。他の治療でも基本同じなのだが、一般にはあまり知られていない。歯科医師でさえもこの業界に入って初めて知り愕然とするのだが、誰も声を上げない。自費の説明をする方が簡単だからだ。長い物には巻かれろ、ということか?
日本はもっとも上手くいっている社会主義国だと言われるが、このようなカラクリがある

象牙質のクラックはあるようにも見えるが定かではない。象牙質のクラックは厳しい。完全離断して抜歯になる可能性がある。ナイトガードや補強冠による歯牙破折対策が必要だ

α-TCPセメントで覆髄

直視下でもミラーリングテクニックも難しかったのでCRの2回法ができなかった。
既製のストリップスを使って1回法でCR充塡した。1回法は気泡が入りやすい欠点がある

CR充塡後

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Comment

  1. タムラ より:

    はじめまして。ブログをよく拝見しています。
    現在、日本人の虫歯はすごいペースで激減していますが
    先生はこの原因についてはどうお考えですか?
    色んな説があるようですが・・・。

    • mabo400 より:

      そうなんですか。。うちでは元々少ないです。どうなんですかね。。一番の原因は食生活ですかね。。ダラダラ食べたり飲んだりしなくなったとか?当県は虫歯が多い県でその中でも一番多いところに学校歯科医で派遣されて保険指導(食生活や歯磨き指導)だけでDMFTが激減した経験があります。小学生の平均4から1だったか、ちょっと忘れてしまいました。過去記事に載せているかも。その後フッ素導入ということになって、そんなもんより重曹が効くだろ、と言ったら学校歯科医の辞表を書かされましたので、その後どうなったかは知りませんw
      普通の子の虫歯は減っているように思います。ネグレクトかそれに近い子は多いですので、やはり食生活でしょうね。

  2. タムラ より:

    お忙しい中わざわざありがとうございます。
    「特に子供の」虫歯が激減と表現したほうが適切でした。
    ややこしい書き方ですみません。
    ↓よく出てますがこういうのです
    https://style.nikkei.com/article/DGXNASFE0203G_S4A600C1NNMP00/?page=2
    ブログの更新楽しみにしています。
    いつも有益な情報を載せて頂いて感謝しております。

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