歯科医院長mabo400のブログ

微生物腐食

2020/09/01
 
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虫歯は細菌感染症だということは論を待たないだろう。。と論文の冒頭に書き込む歯科医師がたくさんいるのだが、
残念ながら虫歯は細菌感染症とは言い難い。

細菌感染症というのはコッホの定義を持ち出すまでもなく、特定の細菌の感染により細菌の代謝する酵素なり毒素なりで病気を引き起こすというものだが、その特定の虫歯菌とされているものを口腔内から取り出して試験管内の歯牙表面で培養しても虫歯はできない。ただ孔食と工業分野で呼ばれている初期の虫歯とされている現象が再現されているのみだ。

もう試験管内での虫歯の再現はできないと諦めているようだ。「虫歯の電気化学説」に従えば可能だが。

ただミュータンス連鎖球菌とラクトバチラス(乳酸桿菌)は強い酸(と言ってもpH4を下回らないのだが)を出すので虫歯菌ではないかと思われている。
確かに臨床的にはミュータンス連鎖球菌が検出される子は虫歯になりやすいようだとは思う。

しかし、これらの細菌だけが酸を代謝するわけでもない。400種類以上あると言われる口腔内常在細菌のうちの半数以上が酸産生菌なのだ。お前が虫歯菌だろう、、と言われても困る細菌ばかりだろうw

ミュータンス連鎖球菌は歯牙表面で砂糖水で培養することができ、その下の歯牙の表面に小さな穴をあけることが知られている。

ミュータンス菌の電顕像(日本歯科医師会会報より引用)

砂糖を与えるとデキストランというネバネバ物質に変え歯牙の表面に固着し他の細菌の付着の足がかりにもなり、細菌の塊と言えるバイオフィルムを形成する。この物質はミュータンス菌の餌でもある。

このバイオフィルムの下の歯牙表面には孔食を生じる。

肉眼で見ると白濁しているように見える。孔食が無数に存在し柔らかくなっているエナメル質は初期の虫歯と思われている。

このまま対策を講じないとこうなってしまう場合もあるが、治ってしまう場合もある。

バイオフィルム下で起こる孔食は微生物腐食という名前で金属の腐食の1つとして知られている。
これは通気差腐食の一形態だが、他にも幾つか知られている。

http://mabo400dc.com/dental-treatment/post-1962/

表題画像が通気差腐食の一形態としての微生物腐食だ。

これはまさしくミュータンス連鎖球菌を歯牙表面で培養したものと同じだということが判るだろう。

歯牙はハイドロキシアパタイトが主成分でありプロトン伝導性セラミックスということは前回までに解説している。
金属は電子の伝導性があるが、プロトン:H+と電子:e-は相補性があり、電流の向きとしては逆になるというだけで、同様に扱えると考えても良い。

虫歯もバイオフィルム腐食:微生物腐食の一形態と考えても良いということが判ると思う。

虫歯の発症にはプロトンの存在とそれが歯牙内部を伝導するための起電力(この場合はバイオフィルム内外の酸素濃度差による酸素濃淡電池:通気差電池)が必要だということも分かると思う。

要するに口腔内常在細菌は虫歯の原因菌とは言い難いが、虫歯の進行を助長するとは言える。
虫歯は細菌がいなくても発症させることができるからだ。

ーーー以下過去記事の引用ーーー

微生物腐食に関するサイトはこのところ増えているようで、
いろいろと虫歯の事を考える上で参考になります。
虫歯にはやはり微生物腐食も大きく関与しているのだなと思わせます。

というか、虫歯は微生物腐食の典型例と言っても差し支えないでしょう。

特に歯科関係者は早くこのことに気が付いて欲しいものです。
そうすれば、この世から虫歯が消える可能性が見えてきます。
実際に、僕の目が届く範囲では虫歯は克服されています。

http://www.bio.nite.go.jp/nbdc/mic2009/knowledge_2.html
http://www.edstrom.co.jp/resources/water_biofilm.htm

微生物腐食の原因の1つに「酸素濃淡電池効果」、「通気差電池効果」というのがありますが、
r_update_biofilmfig12.gif

もう1つ硫黄還元細菌(SRB)という嫌気性細菌の関与も知られており、
口臭の原因物質の1つ硫化水素との関係も伺わせるが、
硫黄酸化物を硫黄イオンまで還元する過程で電子を金属(歯の場合はカルシウム)から奪って腐食させる機序が知られています。この反応においても重曹=重炭酸イオン(HCO3-)は阻害因子(虫歯を防ぐ)となります。
img_002.jpg

還元された硫黄イオンは最終的には、鉄イオン(血液成分)と結びついて硫化鉄となって沈殿します。
d-skt1.jpg

この黒い物質、どこかで見たことはありませんか?
そうです、虫歯の色ですね。
IMG_9262-2.JPG

この硫化鉄はこれ以上虫歯が進行しないためのバリアになります。
なぜだか、お解りですよね?
硫化鉄はSRBがこれ以上還元できない物質というだけではない、
分極剤として腐食電流を阻害するのですね。
ですから黒い虫歯は進行が遅いのであまり心配しなくてもよいわけです。

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