酸で歯が溶ける?その2

虫歯の発症要因は2つしかない。
1、酸性溶液中に歯牙が存在すること。
2、虫歯になる部分と対電極になるような何らかの起電力が存在すること。
理由は歯牙(ハイドロキシアパタイト)は酸つまりプロトン:水素イオン:H+のイオン電導性セラミックスで、プロトンが歯牙を通り抜ける時にCaから電子を奪いCaを溶解させるというのが虫歯の本質だからだ。
起電力の代表的なものに自然電位の差つまりイオン化傾向と酸素濃淡電池(通気差電池)というものがある。
その他、酸化・還元カテゴリーの酸化(電子を奪う)と言った化学、生化学的な現象も含まれる。
1、2はどちらか一方では虫歯は発症しないと言っても良い。両方必要だ。
・・と言ったが、いわゆる虫歯菌というものは僕の提唱する「虫歯の電気化学説」で言えばどういう位置付けになるのか?
現在の歯科医学では「虫歯は細菌が出す酸で歯が溶けたもの」ということにしているようだが、実際に実験してみると嘘だということが判る。歯は細菌の出す酸では溶けない。
まだ虫歯の発症メカニズムは不明のままなのだ。
虫歯菌(たまたま歯医者がそう言っているだけなのだが)というものが存在するとすれば、1の酸産生に関わるだけではなく、2の起電力、主に通気差電池(酸素濃淡電池)の形成メカニズムにも関わっている。
以下、過去記事の引用だ。
ーーーー引用開始ーーーー
表題画像は虫歯の穴(ウ窩)の中にいる細菌の顕微鏡画像です。
動画で見ると、かなり激しく振動しているように動いています。
ウ窩にはこの細菌がぎっしり詰まっているのをよく見かけます。
歯は酸では簡単に溶けるものではないというお話は前回しました。
では、虫歯発生のメカニズムは何なんだ?
と思われるでしょうが、
それは工業分野ではよく知られた「微生物腐食」と呼ばれるものなのです。
これは「通気差腐食」と呼ばれる現象で説明され、
バイオフィルムの表層部では溶存酸素濃度が高く、
深層部では低いことが原因となっています。
細菌は糖質と酸素から最終的には水とCO2とATPを合成する過程で酸素を消費します。
これは内呼吸の中の解糖系と呼ばれ、この過程の途中で乳酸などの有機酸が生成されます。
グルコース (C6H12O6) + 6 O2 + 38 ADP + 38 Pi → 6 CO2 + 6 H2O + 38 ATP
要するにバイオフィルムの深部は酸素が消費され酸素濃度が低くなり、
バイオフィルム内外に酸素濃度勾配ができ、
この酸素濃度差があると金属が腐食するのです。
「通気差腐食」は金属から電子が抜けて金属イオンとなり溶出する現象の1種であり、電池と同じメカニズムです。
分類に従うと「腐食電池」の中の「濃淡電池」の中の「通気差電池」となります。
歯もカルシウム(金属)を主成分としていますので、
このメカニズムによって腐食します。
確かに糖質摂取後数分でバイオフィルム中のpHは低下しますが、
このpH4程度の酸では歯は溶けません。
このpH低下は細菌の解糖酵素により糖質が分解された結果起こるのですが、
この酸が直接歯を溶かすわけではないのです。
解糖の結果、バイオフィルムの内外で酸素濃度勾配が生じ、
「通気差腐食」が生じるのです。
pH低下は酸素を消費して糖質を解糖した結果にしか過ぎません。
もちろん、pH低下は水素イオン等の電導性物質を生じるわけですから、
電池としての機能は強化されるので、さらに腐食を促進させます。
pH低下は解糖の副産物で直接歯を溶解させるものではないのですが、
pHが低下している虫歯の穴(ウ窩)には酸性に強い細菌(耐酸性菌)しか残れませんので、
結果的にウ窩にいる細菌が虫歯菌と呼ばれているのです。
この辺りも原因と結果を取り違えているように思います。
では、なぜ重曹(アルカリ>pH7)でうがいをすると虫歯の進行が止まるのでしょうか?
1)虫歯菌が持っている解糖酵素の至適pH(最も効率のよいpH)は5付近にあるので、
アルカリ>pH7以上で中和(pH7)するとその効率が落ちる。
つまり酸素の消費量が低下するので、結果として「通気差腐食」が起こりにくくなる。
2)水素イオン、金属イオン等の電導性物質が減るので電池が形成され難くなる。
3)唾液中のリン酸イオン、カルシウムイオンはpHが高いほうが溶けにくいので、
過飽和になり析出し易い=再石灰化し易い。
ということで、糖質の飲食後は「重曹うがい」をしましょう!
次回は虫歯は「金属の腐食」だという観点から、
その対策を考えてみましょう。
つづく。。
参考文献:
1)丹治研究室 Tanji Laboratory ホームページ
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 生物プロセス専攻 生物機能工学講座 生物化学工学分野
2)金属材料の腐食とその防止
Introduction to corrosion and corrosion control
佐藤 幸弘
Yukihiro Sato
大阪府立産業技術総合研究所研究報告,No.10,p.36(1997.7)より