今日も野戦病院シリーズ27

40代男性、左下5〜7ブリッジ、脱離、温痛+
定期的にメンテナンスしている方なのですが、
なんだか熱いものがしみる、、ということで急遽来院されました。
さてはこのブリッジ、脱離しているのか?ということで
エキスカベータで引っ掛けると簡単に外れた。
セメントは効いていない。
セメントは全く効いていないが、幸いひどいカリエスにはなっていない。
実は十分に狭い隙間ならセメントは必要ないのです。
多分ですが、セメントが崩壊して10年以上経過しているように見えます。
・・金属冠の合着用セメントはどれが一番長持ちして良いのか?と歯医者でも迷うのですが、
まず、歯質接着性のセメントはほとんど無意味です。
金属接着性もどうでもいい。
咬合力に十分耐えるように、硬いのが良い。
そしてこれが重要なのですが、歯質よりもイオン化傾向が大きいのが良い。
金属で歯質よりイオン化傾向が大きく、歯科材料でよく使われるのは亜鉛です。
セメントが崩壊しても歯質より先に亜鉛が溶けてくれて、歯質を守ります。
これは「カソード防食」と呼ばれています。
これらの条件を満たすのは「リン酸亜鉛セメント」になります。
練和操作がかなり難しいという欠点があり、惜しくも絶滅寸前なのですがw
支台歯を見てみると5番はFeSで黒くなっており、7番は黒くない。
虫歯は7番の方がひどく、表面は一層軟化象牙質(虫歯)になっていた。5番は全く虫歯になっていない。
これはどういうことかというと、7番は5番のようにFeSを代謝する嫌気性の硫酸塩還元細菌の生息環境に適しておらず、より好気性または通性嫌気性の細菌の生息に適していたということです。これらの細菌はラクトバチラスのような酸産生菌であることが多く、虫歯になりやすいと言えます。
要するに5番の歯質と冠の隙間は狭く、7番のそれは大きかったということです。
どちらも5番の状態ならセメントは崩壊していても、全く問題は生じなかったでしょう。
実は10年経過のほとんどのクラウン・ブリッジのセメントは崩壊しているのですが、問題が生じない理由はこれです。
7番は一層軟化象牙質は除去して、覆罩セメントも除去して
α-TCPセメントで再覆罩して
CRで失われたエナメル質を再建しました。
トリミング・咬合調整後
CRで歯冠を再建する治療は普通の歯医者さんにはできませんので、
その点、ご理解の程お願いいたしますw
この後は接着性の義歯でも作ります。
脱離しても歯質のダメージは最小限に抑えることができますから。
Comment
こんにちは。
どうやって作るのかわかりませんが、
エナメル質を残すような形で、
クラウンにするのが持ちがよいのかもしれませんね。
昔、知恵袋か何かで、おじいさん先生が、『なたの歯は弱いから、今の段階で、エナメル質を残す形で、ぐるっと歯を包んでしまおうと思う。』といい、そのようにクラウンを作って50年くらい持った、というのを聞いたことがあります。
どこに書いてあったか、なかなか探せない、、、。
バケツ冠とか縫製冠とか圧延冠とか開面金冠とか、そんなやつですね。
多分その通りだと思います。
道具は持っています。作り方も知っています。実際に作って口の中に入れたことはありませんが。
ちょっと調べてみると、バケツ冠の方が、エナメル質が残っているせいで、開けてみたときに、中が大丈夫なことが多いそうです。びっくり。
なんとも不思議な業界や・・。
段差がつくから歯周病の原因になるという人もいるそうなのですが、マージンを歯茎より上にして、ハーフクラウンみたいにして作ればいいのに、と思ってしまう。
そう簡単にはいかないかもしれませんが。
http://mouridental.jp/S/%E3%83%90%E3%82%B1%E3%83%84%E3%81%8C%E6%95%99%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82/
以下抜粋。(お忙しいときは読まなくてよろしいです・・・)
1バケツ冠は基本的にエナメル質しか削らないので 適合が少々悪くても、虫歯にはなりにくい。対して鋳造冠は象牙質まで削るので、もし適合が悪く象牙質が露出してしまえば そこから虫歯になる確率は高い。
2バケツ冠は柔らかいので、 噛み合わせの変化や多少の 不正なかみ合わせにも文字通り柔軟に対応する。そのため、鋳造冠より咬合性外傷(歯周病)にはなりにくい。
むしろ保険で最も多く、使われている12%パラディウム合金の方が よっぽど硬いため、咬合の変化に対しては柔軟ではない。
強い力を受けたとき、穴があかない代わりに、歯を支える組織に被害をもたらす。
3 バケツ冠のほうが食物はひっかかるかもしれないが、
もしバケツ冠が歯周病の原因に大きな影響をもたらすのであれば隆子先生はそれを見逃すとは思えない。隆子先生の臨床経験からして、
適合の悪さがただちに歯周組織に 悪影響をもたらすものではなかったのではないだろうか。 (あくまでも推測)
隆子先生があの時言いたかったことは、
最先端で良しとされているはずの鋳造冠よりも、
昔ながらのバケツ冠のほうが優れることもあり、
教科書や学校で教わったことを鵜呑みにするのではなく、
臨床でしか学べないことも沢山あるのだから、
何事にも広い視野で取り組みなさい。
ということだと解釈している。
臨床には様々なケースがあり、
一概にどちらがいいとは言えない。
それでも、 歯科治療と称して行う治療が、
将来の疾患をひきおこす原因になるリスクまで 考えている歯科医師は本当に少ない。
治療をどのレベルで考えるかによって 答えは異なる。
保険治療で数をこなす診療が悪いとは思わない。
それはそれで必要とされている地域もまだまだ多い。
しかし、そこに新しい歯科治療を 安易な気持ちで組み込むことだけは避けてほしい。
その通りだと思います。
僕は新たに鋳造クラウンを作ることはありません。
精々補強冠にすることがあります。
これだとハーフクラウンどころではなく、1/8クラウン?w
文章長すぎました。ごめんなさい。
歯科進化論の先生もほぼ同趣旨。
http://blog.livedoor.jp/sikasinkaron/archives/1024868960.html
あと、既成冠、バケツ冠と言われるアルミの被せ物がありました。
これまた僕はやったことありませんが、非常に長持ちで、中身の歯がやられることはありません。
残念ながら、最近は見ることもなくなりましたが。。。
古い材料で、残った歯を悪くさせない材料の共通点は 硬さ なんです。
アルミ冠は薄くてペラペラで柔らかいですから、長年使えば穴が開くこともあります。
そこからカリエスになりそうです。。。
が、大丈夫なんです。
既成冠という位なので、型を採ったりせず、
元々サイズ分けされた冠を選んでカパっとはめるだけです。
縁は全くぴったり合ってません。
プラークは溜まり放題、歯周病やカリエスになりそうです。。。
が、大丈夫なんです。
アマルガムも、縁はくずれ、プラーク溜まり放題ですが大丈夫なんです。
金箔充填もセメントなしの直接充填ですから細菌レベルで考えれば隙間からカリエスになりそうです。。。
が、大丈夫なんです。
硬くない事が、顎のパワーをかわしてくれるから大丈夫なんです。
細菌だけが原因と考えてしまうと、昔の治療はあり得ません。
すぐに二次カリエスや歯周病にならないとおかしくなります。
僕も以前、アルミ冠をわざわざ外して今風のクラウンに変えてました。
あまりにも不細工で、縁の合っていないバケツ冠はダメそうに見えてました。
20年以上も使っていたアルミ冠を外すと。。。
中身の歯は綺麗です。
歯茎も少し炎症はみられたりしますが、ポケットがあることはほとんどありません。
そして、僕が被せたパラジウム合金のクラウン。。。
5年も経たずに中身の歯がカリエスやら、
数年で歯周病が発症やら。。。
うふふ。。ですねw
電気化学的にはもう1つ、
僕の実験によるとアルミと鉄は歯質よりイオン化傾向が大きいのです。
過去記事を探してみてください。
計り始めた時はアルミと鉄は歯よりイオン化傾向が大きいのですが、
しばらくすると逆転します。酸化皮膜ができる所為かと思いますが、逆転と言ってもほんのわずかです。
パラや金合金は歯質より桁違いにイオン化傾向が低いので、2次カリエスになりやすいです。もうダメダメの感じです。