院内感染対策その3

      2017/02/26

院内感染対策は常に頭の痛い問題で、
これで完全!これ一本!という方法がない以上、
いくつかの方法を組み合わせたり2回以上したりする方法しかないようです。
院内感染とは患者さんから別の患者さんへと、
機械器具やスタッフを通じて感染が広がることですので、
あらゆる治療や作業のステップで感染経路を遮断することを念頭において行動することが
全てのスタッフに求められます。実はこれが一番大切です。
一人でもいい加減なスタッフがいればすべては台無しになります。
手袋をしているからいろんな汚染源を触れても自分には感染しないと勘違いしているスタッフがいるとしたら、それが一番いけないことです。
廻り回って自分に戻ってくるのです。
こんなスタッフがいたら即クビです。これが最良の院内感染防止策かもしれません。
特に院内感染防止の管理責任者は欠かせないのです。

汚染源は細菌やウイルスなので目に見えないのですが、仮に汚染源が墨汁だと考えてみてください。
墨汁が付いた手であちこち触ったら、よく触る部分は1日で真っ黒になりますよね。
しかも、目に見えないくらい薄い墨でも感染力があるとしたら、、、
実際B型肝炎のウイルスは25mプールに1ccの血液を溶かしても感染力があるとされています。
極力手でものに触れることを避ける、触るとしても必要最小限とし、同じ部位だけにするなどの配慮が必要です。
一番手を触れる機会があるのは、ユニット(診療台)のハンドルやスィッチ類です。
これは、テープ、ラップやスリーブで覆えますが、ユニットはどうします?
薄い消毒剤で拭いても、感染源を伸ばし広げるだけかもしれませんね。
ユニットを患者ごとに取り換える?、、、突き詰めてゆけば
患者さんごとに病院を燃やして建て替える?、、、ことになってしまいます。
さすがにそれは非現実的ですので、
うちではビニールのカバーを飛沫の飛びやすい患者さんの頭がある背もたれに掛けて、
患者さん毎に使い捨てています。
多量のゴミが出るので、できれば避けたいところですが
しかたありません。
紙コップ、エプロン、紙トレー、注射針などは1回使用のディスポですが、
かさばらないのでまだ楽なのです。

院内感染対策

前回までは、うちはEOG(エチレン・オキサイド・ガス)とオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)を
メインの滅菌手段に使っているお話をしました。

院内感染対策その2

一般的に歯科で使われる消毒・滅菌方法は、
EOG(ガス滅菌)、オートクレーブ、グルタルアルデヒド、フタラール、過酢酸などがありますが、
完全に微生物がいなくなる滅菌はEOGとオートクレーブだけ、
後は(ほとんど)感染性微生物がいなくなる高水準消毒と言われるものです。
フォルマリンやアルコールは中水準消毒、ヒビテンなどは低水準消毒です。
完全滅菌というのはEOGとオートクレーブだけなのです。
酸性水やオゾン水はかなり怪しげです。
高水準消毒剤はタンパク質が変性して器具にこびりついて汚れが落ちにくくなっったりしますし、
金属も痛むものもあります。
プラズマ滅菌というのもありますがとても大きく歯科用には不向きです。
歯科用が出たら導入するかもしれませんが、浸透力が弱いのが気になります。

オートクレーブは完全な滅菌方法ですが、高温(120℃以上)高圧(2気圧)なので機械器具や石膏模型が壊れやすいのです。
それでも壊れない器具だけが対象になります。
もちろんプラスティックは融けます。間違って歯ブラシなど入れると内部で融けてこびりついて後が大変です。

EOGはプラスティックでも溶けたりもろくなったりしないし、、
消毒時の温度も低く浸透力も強いので歯の切削器具や歯の石膏模型を痛めることなく滅菌できるメリットがあります。
ただ毒性が強く作業環境濃度が1ppm以下という基準をクリヤーしないといけないので、
取扱資格の取得と半年に1回の環境測定が義務付けられていて1回35000円程かかります。
これでEOGを止めた歯科医院は多いと聞きます。
でも、今のところこれ以上の滅菌方法がないのでしかたがありません。

うちでの具体的な滅菌の手順ですが、基本的には最低2回滅菌としています。

また1次洗浄(水洗い)を手でしません。なぜなら水洗い時にスタッフや洗い場が飛沫で汚染するからです。
仕分け

手洗いをするとここが汚染源になってしまいます。
汚れがひどい電気メスのチップなどはアルコールで拭いてから滅菌パックに入れてガス滅菌ですが、
汚れのひどくない丈夫な金属器具は高温(93℃)での超音波洗浄器に直接入れます。
この段階は高水準消毒になります。さらに乾燥後滅菌パックに入れてガス滅菌をします。
超音波&煮沸消毒器

プラスティック類は市販のS社製の塩を使う高温(90℃以下)食洗器で乾燥までさせます。
これでも低水準消毒以上です。
この後滅菌パックに入れてガス滅菌をします。
オートクレーブ&食洗器

あらかじめ感染症である旨の申告をされている患者さんに使用した器具やガーゼなどは
そのまま全部大きめの滅菌パックに入れてガス滅菌をします。
その後1次洗浄をして2回目のガス滅菌をします。

回転切削器具も1回目のガス滅菌をした後に、
オイル洗浄をして2回目のガス滅菌をします。

歯型は採ったらビニール袋に入れたまま周囲を汚染しないように石膏を注入して、
硬化乾燥したらガス滅菌をかけます。
歯型は消毒すると痛むので通常は消毒すらしないことが多いのですが、
ガス滅菌なら滅菌レベルまで持っていくことができます。
滅菌していない歯型で作業する歯科技工士さんが感染症になったり、
歯科技工士さんが触った汚染した歯型からさらに汚染を広げるということを防げるメリットは計り知れません。

今のところ、機械器具を痛めず完全に院内感染を防ぐ方法はEOGしかないのです。
しかし滅菌操作時間が長いという欠点があります。
うちには小型のガス滅菌器が2台大型のものが1台ありますが、
滅菌操作時間は小型のガス滅菌器でも4時間、大型は12時間以上かかりますので、
滅菌するものによって使い分けしていますが、ほぼフル回転状態です。
ガス滅菌器2

 - 削らない・抜かない歯科治療, 院内感染対策。