エナメル質形成不全症 2症例

エナメル質の形成不全はたまに見かけますが、
原因はよく分かっていません。
重度の形成不全になったエナメル質は柔らかくもろいので、
簡単に虫歯や摩耗で歯が無くなってしまいます。
最終的にはクラウンで修復するしかないのですが、
萌出が終わるまで、咬合高径を維持する意味でもCRで歯冠を保護しておく必要があります。
この症例はたまたま兄弟でエナメル質に形成不全があり、
6年前(2005年)に二人同時に水疱瘡と溶連菌感染症にかかったことが分かっている症例です。
発熱性疾患がエナメル質形成不全の原因の1つと言われていますので、
その査証にはなるでしょう。
弟 2004/8/19生まれ、現在7歳。
0歳時に水疱瘡と溶連菌感染症に罹患した。
今年2011/7/13の画像によると、
上下左右全ての6番、左下2番にエナメル質形成不全が認められる。
いずれの歯も0歳時には形成途中であり、水疱瘡等が原因である可能性は高いと思われる。
上顎左側6番のCR充填治療前後の画像。
2011/8/9撮影
兄 2002/3/11生まれ、現在9歳。
3歳時に水疱瘡と溶連菌感染症に罹患した。
上下顎4番にエナメル質形成不全が認められる。
形成不全が強度なものと、そうでもないものがある。
その原因は不明だが、3歳時にはその形成途中であるので、
水疱瘡等がその原因である可能性は高い。
2011/10/26撮影
右上4番処置前
形成後、頬側の形成不全部位は摩耗、虫歯になる可能性は低いので、
再結晶(再石灰化)を期待して、このまま経過観察
CR充填後
右下4番の歯冠は重度の形成不全
CRで歯冠を全被覆した
右下4番の形成不全は軽度なので、このまま経過観察
兄弟2人とも同時に水疱瘡等に罹患しており、
エナメル質の形成時期とも符合しているのが、
水疱瘡等とエナメル質形成不全との深い関係を伺わしめていて興味深い。