今日の充填治療その35 (4)

自分で作ったメタルインレーの再治療のケースは少ないというか、
この症例が唯一かもしれません。
30代男性、15年経過症例です。
今日は矢印の部分、左上6番。
この方は15年前に左上の4番以外は形成、印象、技工、セットまでの全ての工程を僕が手がけました。
インレーの歯肉側マージン付近にできた2次カリエスです。
「虫歯の電気化学説」によれば、
酸性環境下及び低酸素濃度環境下での異種金属接触腐食と考えられます。
部分充填で済ませる事も多いのですが、
この症例はメタルインレーを全部除去しました。
えらく時間がかかり、バーの損耗も激しいので嫌です。
近心の2次カリエス部分はインレー内部まで進行していました。
また、遠心のインレー下は2次カリエスにこそなっていませんでしたが、
硫化鉄と思われる黒い物質が付着しています。
この部分はセメントが効いてなくて隙間になっていたところです。
幸い2次カリエスになっていなかったのは、
隙間が大きくはなく、酸素の供給が十分ではなかったので、
硫黄代謝系の嫌気性菌しか繁殖できない環境だったのでしょう。
硫化鉄が出来た時点で虫歯(金属腐食)は止まります。
このように虫歯を理論的に解析できるのは
「虫歯の電気化学説」のみです。
この理論の有用性が分かりますね。
後は普通にα-TCPで仮封して、CR充填します。
メタルインレーは見かけは安定していますが、
このようにセメントが緩んでいる場合もけっこう多く見かけます。
これを保っていると解釈すべきかどうかは??ですね。
歯科医師の皆さんはどう思われますか?