今日の抜歯再植術シリーズ56.1

   

先日眼科の先生と話をしている中で、眼の感染症の原因菌の中でMRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)の割合は30%というペーパーがあるという話が出て、
いわゆる化膿性の細菌は黄色ブドウ球菌で、それがMRSAだと痛みがひどいという話をされていました。
口腔内の化膿性病変の原因菌も似たようなものだろうし、
この症例もそうだったのかな。。?と思い返していたのです。
このオペをする数日前に痛いというので、来院されていたのです。

MRSAは多剤耐性を持っていることが多いので、もしMRSAならうちで出しているセフゾンは効かないな〜と心配になりました。
でも、意外と抜歯再植などのような荒っぽい手術をした後、抗生剤を飲み忘れても、化膿しなかった経験をしています。

創面が口腔内に露出しているのですから、病原性の高い菌に感染してもおかしくはありませんが、実際には化膿しにくいようです。
口腔内の常在菌は400種類を超えていると言われていますので、人間の免疫細胞との関係も含めて、お互いに牽制しあってバランスを保って特定の細菌が増えない環境なのかもしれませんね。

この症例でも膿瘍が大きく、特に近心の歯槽骨は無くなっていました。
膿瘍内の細菌は位相差顕微鏡で見てみるとやはり球菌であることが多いのですが、
実際には膿瘍内の細菌がMRSAの頻度は低いのでしょう。

今の所、薬が効かないという電話もかかってこないので、大丈夫そうだな、と思っています。

でも、今までは感染による失敗例はありませんが、抜歯再植やインプラント植立のような抗生物質を使わないとできない処置はいずれできなくなる可能性はありますね。
今のところMRSAは感染力も病原性も低いので通常の免疫力を持っている人にはそれほど問題は出ていないのでしょうが、

今後はむしろMRSAが優勢とならないように術後の抗生剤投与は期間を短くする方向で検討した方が良いのかもしれません。

・・で、組み立て前に歯根の内面を綺麗にする作業をしていると、根管形成バーで穿孔を作っているところがあるのに気がつきました。
膿瘍の原因は歯根破折だけではないようで、穿孔による膿瘍形成の方が先行していたようです。

綺麗にして、

既製のポストを持ち手にして

組み立て始めました。

最後に一番小さなパーツを接着して

CRで支台部分を作り

抜歯窩は事前に膿瘍を搔爬して綺麗にしておき、組み立てた歯根を挿入

ソケットに完全にフィットしたことを確認して

隣在歯と接着固定する

前歯なので、CRで化粧して

包帯して終わり。とりあえず抗生剤はいつも通り4日分出しています。

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