後天性開口2.02

   

47歳女性、後天性開口

うちに来られる患者さんは初診時から概ね1年毎の全顎16枚法の画像があり、侵襲的な
治療行為をするときにはその過程の全てが画像データで記録されています。
もし必要があれば、過去に遡って患者さんの口腔内の変化を再構築し、考察することが出来るのですが、多くの歯科医師の皆さんには信じられないことかもしれません。
診療時間の多くが画像データ採りに費やされるわけで、その分売り上げは落ちるからです。

この方は15年前、歯が痛いという主訴で来院されました。
この時僕は担当していなかったので、詳細は不明なのですが、
外傷性の疼痛というのは非常に多く見かけます。
外傷性の歯根膜炎や外傷性の歯髄炎、外傷性う蝕、クラック、歯冠破折などです。

担当医の報告によると、この方の外傷性咬合による歯茎部のエナメル質がチッピングするその瞬間に出会ったというのです。その瞬間に立ち会えるのは非常に珍しいことなので、画像にしておけばよかった、と悔しがっていました。

噛み締め等の外傷力により歯茎部に応力が集中し、薄いエナメル質が剥がれ、露出した象牙質も応力腐食割れから隙間腐食(歯茎部う蝕)が起こります。ブラッシング圧が強ければWSD(楔状欠損)が出来ます。

2002年の来院時から咬合性外傷用のスプリント(ナイトガード)で経過を見ていました。
ナイトガードは顎関節症のスプリントと同様にフルバランスというか、下顎の自由な動きを阻害しないような考えのもとに調整しています。
この時の顎位が中心咬合位と違っていても、それは問題にせず、意識的に咬み合わせの位置をコントロールできる起きている時は元の中心咬合位で食事などをしていただくことにして、就眠時は筋バランス位でリラックスしていただく考え方です。
要するに咬合調整、補綴的・矯正的咬合再構築等により中心咬合位を無理に筋バランス位に近づけることはしないという意味です。

では、2002年の来院から画像データが残っている正面観を最小限アップしてみます。
最後の2012年から2016年までの4年間は来院が中断していました。
その間に下顎が右方偏位というか、右方回転しているようです。

この右方回転が左下の水平埋伏智歯により左下67が押されて挺出し、左側の咬合高径が上がり起こったものならば、46歳になって突然そのようなことが起こるとは考えにくいのです。
先天性開口3にアップしたように、親知らずによる開口は親知らずの歯根が完成し萌出する20歳前後に起こることが多く、親知らずが前方の歯を押すのなら、その力の方向から前方歯の叢生を伴うからですが、その所見が見当たりません。

スプリント装着時は右方回転の筋バランス位になっており、考え方を変えれば中心咬合位は潜在的な左方強制位になっており、それが何らかの契機により筋バランス位の右方回転位になったと考えるのが自然です。中心咬合位は歯の萌出途中で偶然獲得された噛み合わせの位置で、筋や顎関節にストレスの無い位置とは必ずしも一致していないのです。歯の形状・大きさは下顎周りの筋や関節とは発生学的には別のものだからだと思われます。

この方は右方回転する前から右噛みの傾向があり、それは歯茎部カリエスが右側の方が大きいことで判ります。
また、今回咬合調整をした時の印象からも、右側の当たりが強く左側のそれが弱いのです。まず左下が高くなり、右方回転した印象を得られていないのです。
患者さん自身も左側は噛んでいないと明言されていました。

次回は2016年に右下7の外傷性う蝕により再来院された時の画像をアップしてみたいと思います。

2002/06/03

2004/02/24

2005/05/16

2006/05/24

2006/12/26

2007/05/29

2008/07/09

2009/07/09

2012/01/07

2016/07/09
下顎が右方回転している。

 - 歯科未分類, 削らない・抜かない歯科治療, 外傷性咬合