今日の2次カリエスシリーズ84.04

   

70代男性、右上7、メタルインレー2次カリエス、自発痛ー

前回のつづきです。

http://mabo400dc.com/dental-treatment/post-20984/

こういう難症例のCRのときの軟化象牙質(虫歯)を除去するというのは非常に難しく、
まず、直視できない。
器具が届かない。
唾液にまみれる(唾液腺乳頭がすぐ横にある)。
軟化象牙質と健全歯質の区別が付きにくい。
出血させたらタイムアウトになる。

など、絶望的な戦いを強いられます。

それでも挑戦するのは通常の治療には患者にとっても僕にとってもメリットがないからです。

うちは予防歯科なので、
僕は削って被せて儲けようとは一切思っていません。
通常のそのような時間のかかる治療が僕には苦痛なのです。

それとそのような治療が患者にとってもメリットがあるのか?
と言われるとはなはだ疑問なのです。

まあ、こんなことをいうと補綴専門医の歯医者さんからクレームが付くことも承知しています。
僕も技工士上がりで、通常の治療を最初から最後まで自分でするというオールマイティの補綴専門医から始めたわけですから。

しかし、まじめにやっても、それで長期的に上手くいくという保証はない、というのが現実なのです。
実はなにもしない方が良かった。。
というケースはいくらでも経験するのです。

このケースも神経を取るということが上手くいかないということが経験上判っています。外傷性咬合のある患者さんで70代ともなれば、根菅は狭窄していて、器具が入らないでしょう。
アメリカ式のエンド治療というのは若くて健康な人の歯をどうやって感染させずに治療を終えるかということが前提なので、高齢者の治療はそもそも前提とされていません。顕微鏡でいくら見ようが、器具が入らないものは治療などできないのです。

器具が途中までしか入らないので、根尖までちゃんと神経を取ることができない、
まあ、途中までで、いいか。。と適当に済ませているのが現実なのです。まあ、楽だからラッキーと多くの歯科医師は思うでしょうが、
なんか釈然としないものを感じているというのも現実です。

そんなことなら最初から神経を取らないようにもできるのでは?

と考えることも、まあ、それはそれでイバラの道なのですが、やっているというのが僕なわけです。

「神経というのは最良の根菅充填材だ。」というのは歯医者ならだれでも聞いたことがあるはずですから、神経をどうやって残そうか、、と試行錯誤するというのも歯医者の仕事ではあると考えています。

上手くいかなくて痛くなっても、次の一手があるわけですから。

この症例でも上からの画像では判りにくいでしょうが、歯肉縁下3mm(信じられないでしょうが、歯肉縁下の虫歯の治療は困難なので、神経を取るどころか抜歯もやむなしというのが歯科保存学の教科書に載っている考え方なのです)はあって、口蓋側の歯肉縁下にも虫歯が続いていました。(矢印部分)
接着マージンだけは軟化象牙質を可能な限り除去しないと接着不良で神経の症状が出る可能性はありますが、特に歯牙にクラック(ヒビ)があったりしなければ、99%以上の確率で、かなりの長期間に渡って安定的に経過するようです。

軟化象牙質を除去すると確実に露髄するであろう中心部はあえて軟化象牙質は残しますが、神経症状が出ているときは、露髄するまで軟化象牙質を除去することはあります。

どちらにしろ。α-TCPセメントの強アルカリ性の静菌作用と添加抗菌剤により、出ていた症状は収まり、軟化象牙質は再硬化し、2次象牙質ができるケースがほとんどです。

治らない場合はクラックや接着剥がれなどの辺縁漏洩があるか、感染している細菌がそれらの薬剤に抵抗性があるかのどちらかです。

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