今日の何やっているの?シリーズ324.02

   

30代男性、右下6、隣接面カリエス、自発痛+

このときのつづきですが、リンクを辿って過去記事を参照してください。

http://mabo400dc.com/dental-treatment/post-20847/

だんだん痛みが酷くなるというので、結局高速バスで関東地方からうちに来られた。
3度目の来院です。

通常、CR充填で痛みが再発することはないので、
歯牙破折だろうと思っていましたが、
残念ながらやはりそうでした。

エナメル質がチッピングしたので、
患者は僕のCR充填技術が下手なのではないかと言っていましたが、
僕に言わせれば、3ヶ月くらいでチッピングするのはけっこう咬合力が強いなという印象です。
でもこれは想定内です、エナメル質が薄いですから剥離しやすい。

対策としては補強冠を装着するしかない。

また隣接歯にも同じようにクラックがあり、隣接面カリエスができている。
もちろんこの歯だけではなくほとんどの歯が同じように傷んでいるように見える。治療などせず、重曹うがいだけで自己管理するのが吉だろう。
「何もせん方がいい。。」そういうケースだ。

CRを除去すると前回のα-TCPセメントが見えてきた。

α-TCPセメントを除去すると髄角部に穿孔したが、
出血しない。
冠部歯髄は溶けて無くなっているのかもしれない。

クラック等の破折線は明らかには判らない。
よく見ると上の方にあるようにも見えるがさだかではない。

天蓋を除去すると
冠部歯髄は完全に無くなっていて、
根部歯髄は#15のエンドチップを挿入してみると明らかに生きているのが3本。
1本は途中で止まるので、生活しているか失活しているかの確認はできないが、
そんなことをしてもあまり意味はない。
どちらにせよ、α-TCPセメントで根充だか覆とうするのだから。

残念ながら、縦方向にクラックが見える。
しかも根菅口にそって深部に向ってクラックができているようにも見える。

このクラックは部分的に両側が白く脱灰しているので、電解質は透過するのだろう。これは隙間腐食と思われる。
しかし細菌の侵入は顕著ではない。細菌の侵入があれば、もっと激烈な痛みが出るはずだし、クラック部分が硫酸塩還元細菌による代謝産物のFeSで黒くなるからだ。
電解質の浸透による浸透圧の変化による歯髄の失活だろう。

患者は去年の10月の最初の治療のとき、メタルインレーを除去するときに私の失敗でクラックを入れてしまったのではないかと疑っているが、
もしそうなら、そのときに破折していて、痛みが一時的に収まったりはしない。
しかも天蓋部分の象牙質にも明瞭なクラックが認められるはずだが、それもない。

そもそも、生活歯の歯根を縦に割るなどという力技は人間の手の力では無理だ。
抜歯時にエレベーターでこじっても歯根は割れはしない。
歯医者ならだれでも経験すると思う。

多分10年以上の歳月をかけて、少しずつクラックが広がってきたのだろう。
患者は若いころサッカーのラフプレイやボクシングのトレーニングで何かを咥えて首の筋肉をトレーニングしていたと言っていましたので、
歯には大きなストレスが度々かかっていたのだろう。
金属でいうところの「応力腐食割れ」ということだ。

クラック部分の拡大写真

近心から遠心までクラックが続いている。
残念ながら、近い将来歯根破折で抜歯になるだろう。
それが何時かは判らない。明日かもしれないし、数年後かもしれない。
神経を取ったあと、加圧根充をするときに破折する危険性が高い。
通法による神経を取る処置も危険だ、

これ以上触っても良いことは全くないと判断し、α-TCPセメントを入れ、

CR充填して、補強冠を装着した。

その後1〜2週間程はもったようだが、またじわじわと症状が出ているということのようだ。
一時的に症状が治まるのはクラック部分をα-TCPセメントやCRで塞ぐからだが、いつまでもは持たない。じわじわを電解質が侵入してくる。

まだ根部歯髄は生きているので、歯髄症状があるが、完全に失活すると痛みは止まる。その後いつの間にか歯根破折して、歯肉が腫れるという症状が出るはずだ。

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