今日の何やっているの?シリーズ343

   

40台男性、左下5、FCKダツリ後、残根放置

レントゲンでは、ポストがあったと思われる歯根内部が球状に虫歯になっています。

一般の歯医者さん的には歯根内部に酸産生菌が繁殖し、酸で歯根内部が溶けたのだろうと思っていますが、
そんなに単純な話ではないのです。

歯はpH3の炭酸飲料にに数週間浸しても溶けないことがわかっています。
誰でも実験で確かめることができます。
乳歯を持っていらっしゃる小学生の皆さん、
夏休みの自由研究でやってみたらどうでしょう?

歯に酸(H+:水素イオン:プロトン)が通り抜けるときに虫歯ができることも実験で確かめることができます。

http://mabo400dc.com/dental-treatment/post-619/

どういうことかというと、酸があるだけでは虫歯にはならず、水素イオンを動かす起電力がないと虫歯にはならないのです。

その起電力の1つに酸素濃度差による通気差電池というのがあって、
通気差腐食の一種のバイオフィルム腐食として知られています。

http://www.biochemeng.bio.titech.ac.jp/research/biofilm/cathodic%20protection/cathodic%20protection.html

実はミュータンス菌を牛歯の上で培養し、その下で初期の虫歯が発生する実験はこの通気差腐食のことです。

虫歯菌と呼ばれる特定の細菌がいるというわけではなく、バイオフィルムの内外で酸素濃度勾配があり、酸産生菌であればどのような細菌でも虫歯は発症します。

この歯根内部が球状に溶ける現象も歯根内外の酸素濃度勾配による通気差腐食だと考えられます。

このように歯根内部が虫歯になると、もう一度ポストを形成することが難しく、
また、虫歯を全部除去すると歯根が無くなってしまいます。

そこで歯根内部の軟化象牙質(虫歯)を全部除去せず、接着マージン付近だけ軟化象牙質を除去します。
そして歯根内部にα-TCPセメントを充填します。
このセメントは歯質と同じ成分なので、軟化象牙質が容易に再硬化します。

その上をCRで漏洩が無いようにカバーし、維持装置としてピンレッジの形成をします。
一般に冠がダツリしないための土台の高さは2mm以上は必要とされていますが、歯根内部方向に2mmでも同じことです。

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