今日の何やっているの?シリーズ350.04

      2017/09/21

50代女性、右上6、冷温水痛+、自発痛+、咬合性外傷

http://mabo400dc.com/dental-treatment/post-22186/

先週のつづきです。
近遠心的にクラック(ヒビ)があって、このヒビの隙間から口腔内の電解質や細菌が歯髄内に侵入して歯髄炎の症状が出ています。

歯というものは非常に丈夫な器官で、ハンマーで叩きわる程度の力でないと壊れることはありません。
しかし長年にわたり過大な咬合力が繰り返し繰り返しかかり続けると、いわゆる「応力腐食割れ」が起こり破折します。完全に離断するまでいかなくてもクラック(ヒビ)が入り、そこから電解質や細菌が侵入し、沁みる、痛いという歯髄症状が出ます。

こういった破折の特徴は破折線が近遠心的に走ることで、これは咬合面の形状により咬合力が頬舌的にかかることと、咬合力により歯牙が潰れ、隣在歯の両隣接面どうしが押しつけられ、これも頬舌的な外傷力になることが考えられる。

この手の歯牙の破折には近年よく遭遇し、これに至る危険性のある外相性お咬合習癖を持つ患者を毎月数人は見ます。
世の中ストレスが溢れているのでしょう。
いよいよ現代文明の破綻の日が近づいているように思えます。

・・それはともかく、患者が痛いのでどうにかしてくれー、、と来るからには、どうにかするしかありません。

先週の処置から、症状が治まらなかったので、神経を取るしかないか、ということになりました。

で、局所麻酔下で天蓋を除去していくと、いきなり髄床底に届きました。
冠部歯髄は2次象牙質により完全に埋まって失われていました。

髄床底のクラックは2本あるようです(黒の矢印)。

口蓋根(赤)と遠心根(黄)は根尖まで歯髄は失われていました。完全に失活して溶けていました。
近心根(緑)は途中までしか#15のKファイルが入りませんでしたので、失活しているかどうか確認できませんが、これ以上追求しても意味がありませんので感染させないうちに根管充填してしまいます。
超音波スケーラーのエンドチップ#15で洗浄してエアブローしただけで、根管充填の準備を終えます。根管内を乾燥させる必要もありません。むしろ感染させるだけなのでしてはいけません。

弱っている歯を通常の根管治療をすると加圧根充のときの圧力で歯根が割れる可能性がありますので、加圧根充は避けなければなりません。
α-TCPセメントの精製水練りで根管を充填し、その上にα-TCPセメントの通常練りでカバーしました。
クラック部分はあえて覆とうしていません。CRでカバーするためです。

角度を変えて見ると、クラックが咬合面まで続いており、隣接面カリエスもできています。このカリエスはクラックに添ってできる隙間腐食です。

とりあえず、再CR充填して経過観察します。
いつかは完全離断しますが、補強冠を装着しているので、しばらく持つでしょう。
幸い根部歯髄にクラックが入っていませんので、歯根分離で保存できそうです。

抜歯は避けられそうです。

要するにこの症例には次があるということです。

 - 削らない・抜かない歯科治療, 今日の何やっているの?シリーズ, 外傷性咬合