今日の2次カリエスシリーズ86

      2017/11/29

60代男性、右上6、2次カリエス

これは僕が22年前当地で開業した最初の頃に自分で作ったCKです。
エンド治療からCKの技工、口腔内セットまで全て自分でしていますので、
その再治療の機会が巡ってくるというのは22年間でどのように変化しているかを観察できる千載一遇のチャンスです。

2015/09/26のレントゲン写真

除去後
ミラーのガラスの裏面と表面に2重に像ができているので分かりにくいが、近遠心が黒色になっていて、遠心の一部は軟化象牙質になっていた。ひどい虫歯というわけではない。

除去したCKの裏面を一周見てみるが、金属接着性があるとされるグラスアイオノマーセメントは全く効いていない。セメントと歯質の間は全ての面に隙間があり、口腔内の細菌を含む様々な物質が出入りできる状況になっていた。

特に細菌の活動が活発になっていたと思われるのは冠の縁にあたる部分で、相対的に薄いので咬合力で冠が広がるように変形すると思われ、細菌が必要とする物質を咀嚼の度に取り込むことが考えられる。

この部分にはFeS(硫化鉄)と思われる黒色物質が沈着している部分があり、硫酸塩還元細菌(SRB)が活動していたものと思われる。

http://www.biochemeng.bio.titech.ac.jp/research/biofilm/mic/mic.html

SRBは唾液中のタンパク質由来の硫酸塩を還元し硫黄(S)を作り、血液由来の鉄(Fe)と結びついたものだと思われる。また硫黄(S)は水素イオンと結びつき硫化鉄(H2S)ともなり、冠を除去した時に虫歯臭(卵の腐った臭い)を感じることがある。
その他にもSとFeは様々な化合物やクラスターを形成すると言われており、また単体や酸化物としても冠内面に付着すると考えられる。これらの色は黒、黒褐色、褐色、黄色だと思われ、それらしい物質が冠の縁部分に帯状に付着している。これらの付着順番は酸素濃度等と関係があると考えられるが、まだ詳細には解明されていない。

ともあれ、SRBが生息できる程度の酸素濃度の環境では虫歯は進行しにくいと言える。




虫歯は冠の縁部分に集中しているのでこの部分を削除しながらショルダー形成にして印象した。

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