再石灰化とは(歯科の常識を覆すシリーズ2) (3)

NaHCO3 → Na+ + H2CO3-
HCO3- + H2O → H2CO3 + OH-
konsuさんから重曹とベーキングパウダーの違いについてのご質問もありましたので、
初期の虫歯は治るされている「再石灰化」とは、そもそもどういうことなんだ?
というお話をしたいと思います。
「再石灰化」というのは「recalcification of teeth」の直訳で、
歯から溶けだしたCa(カルシウム)が再結晶するということらしいですが、
かなり曖昧な概念です。
この反対語が「decalcification of teeth」で「脱灰(だっかい)」という訳語が付いていますが、
これまたはっきりしません。
これらの歯科専門用語は、とにかく実態がよく解っていないので、
概念としては、ぼかしておこうという意図を感じさせます。
一般科学用語ではなく、歯科業界でしか通用しません。
僕は再石灰化は「リン酸イオンとカルシウムイオンが再結晶してハイドロキシアパタイトになること」だと思いますので、
単純に「再結晶」と呼んでいますし、
また脱灰は単純に「溶解」と呼んでいます。同じイオン化合物である食塩が水に溶けるのと同じです。
ちゃんとした一般科学用語で語ることができないうちは、歯科医学はいつまで経っても科学にはなれないと思います。
歯科業界人はこの辺りをもっとしっかりお考えになった方がよい。
・・この「再結晶」というのは、表題の最初のイオン反応式を見ていただければ解ると思いますが、
5個のカルシウムイオンと3個のリン酸イオンからハイドロキシアパタイトと4個のH+(水素イオン)が生じ、水溶液は酸性になる、と書いてあります。
水溶液がさらに酸性に傾くと、このイオン式は右には進行せず、反対に溶解する方向に進むはずです。
つまりどこかで化学平衡に達します。
実際に実験してみるとpH3程度の酸(炭酸飲料程度)に1ヶ月浸してもほとんど溶けませんが、
このイオン反応式はpH(酸性度)に依存していると言えます。
つまり、歯を作っているハイドロキシアパタイトは酸性で「溶解」し、アルカリ性で「再結晶」するということです。
そして、右辺のH+ が出来る端から取り除かれれば、イオン式はどんどん右に進む(ハイドロキシアパタイトができる)はずです。
これが「再結晶」が進むということで、一般に「再石灰化」と言われていることだと思います。
では、H+ を取り除くとは具体的にはどういうことをするのかと言うと、
OH-(水酸イオン:アルカリ)を供給してあげることです。
H+ + OH- → H2O
つまり酸・アルカリの中和反応と言うことです。
そのOH- を供給するのが「重曹:NaHCO3」です。
それが表題画像2段目の構造式で、水に溶けて電離します。
以下の式のように
2段階で水に溶けて OH- を供給します。
NaHCO3 → Na+ + H2CO3-
HCO3- + H2O → H2CO3 + OH-
元々重曹は唾液中に一定量含まれており、
炭酸緩衝系と呼ばれる、極端にpHが高くなったり低くなったりしないような仕組みがあります。
うちでは重曹水(500mLに3g)で飲食後「重曹うがい」をすることを虫歯予防だけではなく、
できてしまった虫歯を進行させない、あるいは治すという目的でお薦めしていますが、元々唾液が持っている機能をパワーアップするという意味なのです。
一口にベーキングパウダーと言っても、メーカーによって様々な成分を重曹に添加されているようで、その実体がどうなのかは僕は詳しくはありません。
ベーキングパウダーの本質は重曹成分だけだと思われ、
重曹を加熱するとCO2が発生してパンやお菓子を膨らますことができるという現象を利用した、
極めて安全な食品添加物と言うことでしょう。
主な添加物としては第一リン酸カルシウムとコーンスターチがあるそうで、
第一リン酸カルシウムが何の為に添加されているのかは分りませんが、栄養素としての機能があるようです。
そしてこの第一リン酸カルシウムは水に溶解してリン酸イオンとカルシウムイオンになりますので、
これらは歯を構成しているハイドロキシアパタイトの原料そのものです。
第一リン酸カルシウムが歯の「再結晶」に役に立つ成分ということは考えるまでもないと思います。
ただ、唾液のリン酸カルシウムはすでに飽和濃度に達しているとされていますので、
これ以上第一リン酸カルシウムを加えても意味がないか、過剰なリン酸カルシウムは析出して歯石になる可能性があり、歯周病には良くない可能性があります。>konsuさん、いかがでしょうか?
コーンスターチは食味の改善というか、重曹を薄めて使いやすくする為の添加物だと思いますが、
とうもろこし粉つまりデンプンですので、酸産生細菌のエサになります。
お砂糖の1/20程度でしょうが、虫歯の原因になる可能性があるかもしれません。
ベーキングパウダーを「重曹うがい」にお使いになる場合は、
コーンスターチはなるべく少ないものを選んだ方が良いと思います。
Comment
こんにちは。
口内がアルカリ性に傾くと歯石が出来やすいと言われていますが、重曹うがいで歯石が出来やすくなる傾向は見られないと他の記事でも読みました。
歯石が出来やすい本当の原因は何だと思いますか。噛み合わせを調整するために自然に出来るという考えも聞いたことがあります。
先生の考えをお聞きしたいです。
いえ、単に磨けていないだけw
ありがとうございます!
やっぱりそうですよね笑
動物の口内はアルカリ性だからと言いますけど実際には食べてるものも違えば歯磨きも人間みたいにしてないですし
人間も口を開けっ放しで呼吸とかしてないので比較がおかしいなと色々考えてました
歯垢が歯石になるのに48時間かかると言われてますので、たとえ重曹うがいをしても歯石になるまでには時間がかかりますよね
唾液のpHは7.2とかですが、重曹水はpH7.8。これくらいだとプラークが増えにくくなります。よって歯石になりにくいと。
だ液のpHは人それぞれですが、7.2と7.8ならそこまで変わらないですものね。確かにプラークは出来にくいです。詳しく教えて頂きありがとうございます。
いえ、0.6の違いはかなり大きいです。10^0.6=4倍ですから。
かなり違うのですね。
pHの計算もmolとlogを勉強の最中です。
教えて頂きありがとうございます。
pH7.6だとプラークが増えにくくなるとのことですが。
もし唾液が酸性に傾いていてもそう考えて良いですか?
pHの差で考えるのではなくpH7.6だからなのか疑問に思いました。
細菌が活動するには至適pHというのがあって、そこから上にも下にも離れると生きていけなくなるのです。
至適pHでサイト内検索すると出てきませんか?
とか
http://mabo400dc.com/dental-treatment/post-531/
ありがとうございます。
至適pHの観点からのお話だったのですね。
特別な何かがあったのかなと考えてしまいました。
お手間を煩わせてしまいすみません。