今日も野戦病院シリーズ27

      2018/05/08

40代男性、左下5〜7ブリッジ、脱離、温痛+

定期的にメンテナンスしている方なのですが、
なんだか熱いものがしみる、、ということで急遽来院されました。

さてはこのブリッジ、脱離しているのか?ということで

エキスカベータで引っ掛けると簡単に外れた。
セメントは効いていない。

セメントは全く効いていないが、幸いひどいカリエスにはなっていない。
実は十分に狭い隙間ならセメントは必要ないのです。
多分ですが、セメントが崩壊して10年以上経過しているように見えます。

・・金属冠の合着用セメントはどれが一番長持ちして良いのか?と歯医者でも迷うのですが、

まず、歯質接着性のセメントはほとんど無意味です。
金属接着性もどうでもいい。
咬合力に十分耐えるように、硬いのが良い。

そしてこれが重要なのですが、歯質よりもイオン化傾向が大きいのが良い。

金属で歯質よりイオン化傾向が大きく、歯科材料でよく使われるのは亜鉛です。
セメントが崩壊しても歯質より先に亜鉛が溶けてくれて、歯質を守ります。
これは「カソード防食」と呼ばれています。

これらの条件を満たすのは「リン酸亜鉛セメント」になります。

練和操作がかなり難しいという欠点があり、惜しくも絶滅寸前なのですがw

支台歯を見てみると5番はFeSで黒くなっており、7番は黒くない。
虫歯は7番の方がひどく、表面は一層軟化象牙質(虫歯)になっていた。5番は全く虫歯になっていない。

これはどういうことかというと、7番は5番のようにFeSを代謝する嫌気性の硫酸塩還元細菌の生息環境に適しておらず、より好気性または通性嫌気性の細菌の生息に適していたということです。これらの細菌はラクトバチラスのような酸産生菌であることが多く、虫歯になりやすいと言えます。

要するに5番の歯質と冠の隙間は狭く、7番のそれは大きかったということです。

どちらも5番の状態ならセメントは崩壊していても、全く問題は生じなかったでしょう。

実は10年経過のほとんどのクラウン・ブリッジのセメントは崩壊しているのですが、問題が生じない理由はこれです。

7番は一層軟化象牙質は除去して、覆罩セメントも除去して

α-TCPセメントで再覆罩して

CRで失われたエナメル質を再建しました。

トリミング・咬合調整後

CRで歯冠を再建する治療は普通の歯医者さんにはできませんので、
その点、ご理解の程お願いいたしますw

この後は接着性の義歯でも作ります。
脱離しても歯質のダメージは最小限に抑えることができますから。

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