今日の充填治療392(中級編)

   

50代男性、右下7頬側歯根面カリエス

この部分にカリエスができることはままあるのですが、一般的な説明では、ほっぺに隠れているので、磨きにくいとか唾液がかかりにくいので汚れやすく虫歯になりやすいとされている。虫歯の電気化学説ではもう少し踏み込んだ説明ができる。それはエナメル質と象牙質のイオン化傾向の差により腐食電池を形成し、イオン化傾向の大きい象牙質が選択的に腐食するという機序とほっぺに隠れているので酸素濃度が低い場所となり酸素濃度差腐食が起こる機序があるということになる。また咬合性外傷があれば歯茎部に応力が集中し応力腐蝕割れから隙間腐蝕が進行する。

また治療後に患者が面白いお話をされたので記録しておくことにしました。
この方、右下6を抜歯再植した方なのですが、この6番も破折で抜歯ではなく、歯周病で抜歯勧告をされたそうです。歯根が割れているのは誰でも見れば判る話なので、誤診ということはないと思うのだが、その意図は不明です。説明が面倒だと思ったのかもしれない。歯科業界にはいろいろとドロドロとしたものがあるのは確かです。

今日取り上げる1つ奥の右下7も患者が充填処置を依頼しても、2軒の歯医者さんに完全スルーされたそうだ。うちではしてくれるのに他所ではなぜしてくれないのか疑問だということでした。その理由は同業者として分からない話ではなくて、神経が出てもそれに対処する保険で認められている処置の診療報酬が低く、痛くなって神経を取ることになったら、さらにその保険点数も低くなるというペナルティーがあるので、わざわざリスクを取ってまでそんな面倒なことはしません。患者に痛くなったら下手くそと思われ口コミでそんなことが広がったら潰れるかもしれません。そしてこれが理由として一番大きいのですが、処置に30分かかって2000円の報酬ではスタッフの時給は出ません。15分ではできないでしょう。処置としてはかなり難しい処置なのです。
痛くなってから神経を取って被せると診療報酬は1.5万円〜なので大方の歯医者はこちらを選びます。CR充填で済ませるとか同業者から見ればなんと酔狂な。。と見えますw

予防歯科としては最初から神経を取るという選択肢はない。取るとその歯の寿命は確実に短くなる可能性が高まり、人生100年に対応できるとは思えないからです。患者の将来を考えたら、診療報酬の高低とか、技術的な困難さとか、上手くいかなくて患者に下手くそと思われるリスクとかどうでもいいのです。

軟化象牙質(虫歯)を除去すると、確かに露髄しています。矢印部分。

α-TCPセメントで直覆し

CR充填で様子見。

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