外傷性咬合6.1

      2018/07/02

20代男性、左上6、CR破折による2次カリエス、時々温痛・咬合痛
右上6、アトピー性皮膚炎で金属アレルギーが気になるので、メタルインレーを除去したい。通院中の歯科医院では隣接面窩洞のCR充填はできない。セラミックインレーは歯質の削除量が多いので、CR充填で再治療をして欲しいという依頼だった。

CR充填自体には難しいことはないのだが、非常に問題のある所見が満載だった。6番の象牙質には明らかにクラック(ヒビ)が認められる歯もあり、温痛が出ているという症状からクラックから電解質や細菌が歯髄に侵入し始めていることが疑われる。

要するに歯牙破折一歩手前だ。いつ破折して抜歯せざるを得なくなるか分からない。

・・一目見ると外傷性咬合の持ち主だということは分かる。

エラが張っている顔貌は咬筋が発達していて、必要以上に咬合力が強すぎると思われる。

舌と頬粘膜に歯形が付いていて、歯軸が内側に傾斜している。いつも咬筋や口輪筋に力が入っている、つまり噛み締めをしているということだ。

前回の続きで、
左上の治療前の画像を見てみると、

拡大してみると、咬合面の内斜面に咬耗というよりは座屈が始まっていると言って良いエナメル質の咬合性外傷の跡がある。

咬合面観

拡大してみると、かなり傷んでいるのがわかる。咬耗面とそうではない部分の境目なのかクラックなのか判然としない部分もある。

破折して外れかかっているCRを除去すると亜鉛華ユージノールセメントらしきものが見える。
このセメントはCRの硬化を阻害するのでCRの時には使わないのが通例だが、炎症を抑える効果が強いので、この治療をした先生はこれを優先したのかもしれない。

楕円で囲った咬頭は微小なクラックが多数入っており、いつ崩壊してもおかしくない。

覆とうセメントを除去すると最初の虫歯の時にできたと思われる細菌の代謝産物の黒色物質FeSが見える。これは虫歯ではないので除去する必要はない。

窩洞を直接見てみると、象牙質の深部に達するクラックが複数見える。色素が浸潤しているので、かなり以前にできていたものだと思われる。このクラックから歯髄に電解質や細菌が浸入し温痛などの歯髄症状が出ているのかもしれない。
象牙質のクラックはこの歯がいつか破折することを示唆している。地震の断層と同じでその動く時期は予測できないが、いつか割れる。今日かもしれないし、10年後かもしれない。過大な咬合力をかけないようにして使うしかない。

後は通常通り、α-TCPセメントで覆とうし

CR充填した。

つづく

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