外傷性知覚過敏症

      2018/11/06

40代男性、右上6、知覚過敏症

1週間程前から温冷痛がひどくて、特に液体ものを口に入れるだけで、しばらく痛みが続く。
以前より時々知覚過敏症の症状が出ていたが、今回のは普通ではない、虫歯かと思って受診された。

最近、外傷性咬合によるトラブルがやたら多くて困っているんですが、この方もそうです。
外傷性咬合とは不用意に噛み締めたり、歯ぎしりをしたりして、歯牙や歯周組織にダメージを与えることですが、本人は全く意識できないことが多い。特に就眠時にしていることは全く分からないので、患者はなかなか信じようとしない。以前もナイトガードという就眠時に使うマウスピースを作ったが、全く使っていない。そんなことは信じていないからだ。

レントゲン写真を見ても、右上45のインレーに2次カリエスがあるかもしれないが、実際には隙間とかは確認できない。

以下、鏡像なので、左右逆になります。

外傷性咬合のある方の特徴は、
緊密な咬合でしっかり噛んでいる。
小臼歯に隣接面カリエスができたらしくメタルインレーが入っている(通常、小臼歯は虫歯になりにくい)。
右下6のように歯茎部が下がりWSD(楔状欠損)ができている。
多数のクラックが出来ている(45にも出来ているのだが光線の関係で見えない)。
他にも、骨隆起がある。舌や頬に歯型が付いている。歯や詰め物が欠けたり、取れたりしやすい。知覚過敏の症状や咬合痛がよく出る、などです。

今回は1年半程前にCR充填をした右上6の知覚過敏症ですが、見かけもレントゲン写真でも明らかな問題点は見つからない。CRと歯質の接着剥がれにより微小漏洩があるかもしれないが、その程度ではこれほどひどい知覚過敏症にはならない。
45にもクラックは認められる。

また両隣接面のクラックから細菌の侵入があり黒くなり始めているのが判ると思う。
これは外傷性咬合により歯がゴムまりのように潰れ、隣の歯同士押し合い、ヒビ(クラック)が入ったことを表している。

患者はこの僕がしたCR充填が下手くそで虫歯になっているのではないかと疑っていたようだが、もっとも凍みている6番の口蓋側の象牙質が露出している部分を、CRでカバーしてみることにした。全く削らず清掃しただけだ。

これがカバーした後ですが、違いが判るでしょうか?
これだけで、劇的に凍みなくなるので、患者も外傷性咬合をしていることを認めざるを得ない。またナイトガードを作ってください、、と懇願された。

ひどい知覚過敏の症状が出る理由ですが、クラックが象牙質から歯髄に達して歯髄に電解質や細菌が侵入し始めたというのはあります。この場合はカバーしたくらいでは症状は治まりません。最悪、抜歯(再植)になります。

もう1つは外傷性咬合により歯根尖付近の歯髄動脈が損傷し、微小出血によりできた血栓や血管内壁のデブリが歯髄の抹消血管である冠部歯髄の毛細血管に詰まり歯髄塞栓症を起こす。
この状態は脳梗塞などと同じで炎症性に髄腔の内圧が高まり、象牙細管を通した外来刺激の影響を受けやすくなる。
この状態が知覚過敏症で、梗塞が改善すれば自然治癒するが、改善しなければ歯髄壊死を引き起こすこともある。

以前にも書いたことがあるが、外傷性咬合がないにもかかわらず、頻繁に知覚過敏症になる方は、脳梗塞や心筋梗塞になる前に高コレステロール血症や高血圧症の検査を受けられた方が良い。

 - 削らない・抜かない歯科治療, 外傷性咬合