今日の何やっているの?シリーズ268

      2017/03/20

30代男性、右下6、FCK不適

見た目は問題なくても、セメントは利いていないことはよくある。
というか、ほとんどそうだと言ってもよいくらいだ。

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しかし、セメントがダツリしていてもなぜ虫歯にならないのか?
世界中の歯医者は答えられない。
この問題も完全スルーしているのだが、

「虫歯の電気化学説」では説明可能だ。

このケースの場合、冠を除去してみると、セメントが生きているのは咬合面付近だけだ。
あとはFeS(硫化鉄)の黒い層で覆われている。
この物質は嫌気性細菌である硫酸塩代謝細菌の代謝産物で、
ドブの底の色が黒い理由と同じなのだが、
これが電気的なバリアになっている。

また十分に狭い隙間なら嫌気性細菌の繁殖場所としては良いが、
酸産生細菌である好気性・通性嫌気性細菌の繁殖場所としては不適切ということもある。
それは虫歯の発症条件としての水素イオンが発生しにくいということである。
なぜなら、歯(ハイドロキシアパタイト)は水素イオン(酸そのもの)を伝導するが、
荷電粒子である水素イオンが少なければ、
局部電池が形成されたとしても腐食電流は流れず、
虫歯の発症自体を押さえられるからだ。

こうしてみると、セメントがほんとうに必要か否かというのはあまり意味のある話ではないということが見えて来る。
歯科の歴史の上ではクラウンやインレーといった修復物をセメント合着しない(セメントがなかった)という時代もあったと聞くし、
つい最近までアマルガムや金箔充填と言ったセメントを使わない修復方法もあった。

2次カリエスにならない条件とは、
修復物と歯質の隙間は好気性の酸産生菌が繁殖するには狭く、
嫌気性の硫酸塩還元細菌が生息するには適した狭さがあればよいことが考えられる。

このことは臨床経験が豊富な歯科医師なら思い当たることがあるだろうと思う。

もちろんこの手の嫌気性細菌は硫化水素等の腐敗ガスも発生させるので、
口臭など別のトラブルの原因にはなる。

除去した冠の内面

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冠除去後

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虫歯部分を除去しつつ、
支台歯形成/印象

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つづく

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