虫歯の原因と予防法のまとめ (3)

      2017/02/26

もうそろそろ、「ほんとうの虫歯の原因」シリーズもきりがないですので、まとめに入ります。
詳しくは「虫歯一口メモ」の過去ログを参照してください。
しばらくこのシリーズはお休みします。

虫歯のほんとうの原因は金属腐食と同じ電気化学的な腐食で、
細菌が出す酸に溶けるのではない。

歯は電気化学的には金属として扱うことができるので、
異種金属と接していれば歯の方が先に溶ける(異種金属接触腐食)、
だから金属で修復することはできない。
金属で修復するとしたら、
金属が完全に電気的に絶縁されていなければならない、
これは事実上不可能。

歯が金属と接触していなくても、
エナメル質と象牙質との間でも両者の自然電位(イオン化傾向)は異なるので、
自然電位が低い方の象牙質が溶ける。
歯周病で象牙質が露出するだけで象牙質は溶ける。
虫歯がエナメル質に達すると、
象牙質の虫歯が急速に進行するのは、
象牙質とエナメル質の自然電位(イオン化傾向)に違いがあるからだ。

細菌がいなくても隙間さえあれば歯は溶けるすき間腐食)、
zu11.jpg

細菌がいれば腐食が加速する微生物腐食)、
biofilm01.jpg

・・・歯科医学というものが根本から崩壊してしまいました

虫歯は削ってうめればよいという発想は誤り。
充填修復材に金属を使わず、レジンやセラミックを使っても結果は同じ。
歯と充填物の間に永久にすき間が生じない保証はどこにもない
セメントや接着剤のハガレや溶出はかならず起こり、
ただ時間の問題なだけだからだ。

接着剤を必要としない修復方法には、
アマルガム充填と金箔充填があるが、
歯に直接接するので、
歯との間に自然電位(イオン化傾向)の違いがあるとだめだ。
アマルガムには亜鉛が添加してあるので、
防食効果が期待できるが、
現在アマルガムは入手不能。
亜鉛をわざわざ添加していないアマルガムもあるそうだが、
防食という観点からは無意味だ。
金箔充填の臨床経験はないが、
対エナメル質では、異種金属接触腐食の原理で、
エナメル質が溶けることが予想される。
ただエナメル質は再石灰化により修復するので、
問題はないのかもしれない。
対象牙質では象牙質を腐食させるだろう。

どちらが先に腐食するのか?という問題の確認は、
それぞれの自然電位を測定すればよいので簡単なのだが、
面倒なのでしたくない。

どなたかやってみて教えてください

というわけで表題画像です。
よく見かける金属冠の周りの象牙質が虫歯になりやすいという症例です。
隣の歯は金属冠で修復していないので、虫歯になっていません。

金属冠は口腔内では安定(溶出しにくい:自然電位が象牙質より高い)なので、
接触している象牙質だけが腐食する、
典型的な異種金属接触腐食と考えられる。
zu02.gif

この症例は以前に虫歯でアマルガム(左側の○内)で充填しています。
アマルガムに接触しているところは新たな虫歯にはなっていません。

虫歯を削ってみました、
アマルガムから遠いところほど虫歯がひどくなっています。
IMG_2289-27-11.JPG 虫歯を取り除いたところです、

アマルガムには主成分の銀の酸化防止(腐食防止)のため亜鉛が添加してあり、
亜鉛の自然電位は低いので、亜鉛が象牙質の代わりに溶けてくれているものと思われます。
鉄製品を亜鉛メッキ(ドブ漬け)すると腐食しにくいことはよく知られていますね。

歯が溶けるのは酸(H+)だけで溶けるのではありません。
酸で溶けるのなら、象牙質もエナメル質も金属冠に接していてもいなくても、
分け隔てなく溶けるはずです。
実際に歯を強い酸で溶かすとエナメル質が先に溶けてしまい、
象牙質は溶けにくく有機質の骨組みが残ります、
セメント質は溶けません、
と藤田の「歯の解剖学」という有名な教科書にそんなことが書いてあった?ような
気がします。

従来の歯科医学では虫歯の原因はミューラー?の化学細菌説?とかよばれ、
歯の無機質は細菌の出す酸で溶け、
象牙質の有機質は細菌の出す酵素?などで溶けるとか説明されています。
詳細は忘れましたので、気になる方はお調べ下さい。
こういうことが歯学部では100年以上も学生に教えられ続けているようですが、
虫歯という現象の全てを説明できません。

例えば、実際にはエナメル質の虫歯は進行し難く、
先に象牙質だけが溶けます。
これは酸で溶けるのではない、ということを示唆しています。
4500-19.jpg
電気化学説なら説明できます。

虫歯の原因は先に述べた、
自然電位(イオン化傾向)の違いにより、
電子を奪われた方が溶ける異種金属接触腐食によるものか、

下図の右側で、
酸素を必要とする電気化学反応で、
酸素が多いところが少ないところから電子を奪い水が生じる過程で、
電子を奪われたところが溶ける酸素消費型の腐食かのどちらかです。
酸素消費型.JPG

酸素消費型の腐食はすき間腐食微生物腐食の腐食メカニズムで、
酸素が少ないところ、つまりすき間の奥の方や、
細菌の付着部で細菌の呼吸により酸素濃度が低いところから、
しかも自然電位が低い方(象牙質)が選択的に腐食します。

電気化学的な防食の基本は、
電位を下げる:外部から電子を供給する方法(外部電池でもよい)、亜鉛を使うのはその方法の1つ(下図では下方向)。
2つ目は、口腔環境を弱アルカリ性領域にもっていく方法(下図では右方向)、
これが重曹洗口です。歯にも腐食を免れるpH領域があると思われる。
3つ目は不動態域(下図では上方向)にもっていく方法、歯に不動態膜を作ることができるかどうかは不明、酸化膜や窒化膜などのことですが、今後の研究待ちです。
FIG9.jpg
また重曹は虫歯菌の解糖酵素の至適pHであるpH5付近から口腔内環境をアルカリ方向にずらして虫歯菌の解糖系(呼吸)の働きを抑制して酸素消費を抑える効果も期待できる。
酸素が少なくなっているところが腐食するので、
細菌の活動を抑制することは酸素の消費を抑え腐食の進行を遅らせる。

結局虫歯を予防するには、

1、1次予防に努める(削ったら負け)、口腔内に露出しているのがエナメル質だけなら同電位なので腐食は起こらない。象牙質が露出しないように歯周病の予防も必要。
2、もし充填治療が必要なときは亜鉛入りのアマルガムや金箔充填など
セメントを必要としない(すき間が出来にくい)充填方法を選択し、2次予防に努める。
3、セメントで合着するときはいずれすき間が生じることを前提として、
亜鉛入りの防食効果が期待できるセメント(リン酸亜鉛、カルボキシレートなど)を使い
定期管理を怠らない。

なんだかこれは、、一昔前の治療法が良かったってことですね。。

このシリーズで述べていることは一般の歯科医学では全く研究されていません。
歯科という分野がどれほど特殊な分野か、
専門バカというよりは洗脳に近いものを感じます。
まずは「削って埋める事」ありき、、ということでしょう、
それ以外は思い付きもしないということです。

10年程予防をやってみて判ったのですが、
とりあえずは「削って埋める事」を止めてみること、
虫歯は定期管理していくと決める、
飲食後の重曹洗口は虫歯の進行を驚くほど抑制するので、
それほど心配することはありません。
定期管理とは口腔内写真を始めデータを蓄積して患者と共有することです、
画像やデータを見ながらいっしょにお話をすることです、
思わぬ問題点の発見があったりします。
科学的な裏づけもなく、歯磨指導やフッ素塗布などしても無意味です。
健保適用が認められないなら自費でよいではないですか、
大して手間がかかるわけではないので費用も抑えられます。

結局、この症例はアマルガムが入手できないので、
仕方なくCR充填しました、
一時の気休め程度ですが。
IMG_2290-27-1.JPG

参考文献:1、金属の腐食と摩擦磨耗
2、亜鉛による防食
3、丹治研究室 Tanji Laboratory ホームページ
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 生物プロセス専攻 生物機能工学講座 生物化学工学分野
4、
歯の解剖学第22版 桐野忠
5、口腔病理カラーアトラス 石川梧朗編 医歯薬出版

 - 削らない・抜かない歯科治療, 虫歯予防等一口メモ