温痛は不可逆性の歯髄炎か?

   

歯髄の炎症の程度で冷水痛までは可逆性、要するに神経を取らないでも自然に治る。
温痛が出ると不可逆性、つまり神経を取らないと自然には治らないとされている。
この温痛が出ている状態を放置すると、どんどん症状がひどくなり、自発痛(何にもしないでも痛い)が出る。自発痛にも拍動痛とか程度があるが、実は温痛どころか自発痛が出ていても治るケースはいくらでもある。しかし今回はそこまでは関係ない。

温痛が出ている歯でも治る事例はいくらでも経験するが、
今回はその一例だ。

20代女性、左上45、温痛++

この方には外傷性咬合があることは分かっているので、咬合紙を咬んでもらったら、強く当たる部分がある。歯根膜の炎症により、歯根膜が腫れて厚くなり、歯牙の当たりが強くなっている(赤の部分)のだ。

この症例の場合、温痛がどこから来ているか?2つ考えられる。

1つ目は咬合性外傷により歯根尖付近の動脈が損傷し血栓、血管内壁のデブリ等が末梢血管である歯髄内の毛細血管に詰まり歯髄梗塞を起こし、炎症性に血管の透過性が増し髄腔内圧が亢進している状態のところに温度が高い液体が触れると髄腔内液が膨張し、神経を圧迫し痛みを感じる。

2つ目は歯根膜内部の炎症により神経が圧迫されているところに温度が高い物質が触れると同じように歯根膜内部の圧力が亢進し、神経の閾値を越え痛みを感じる。

歯周病、外傷性咬合などによる歯髄炎・歯根膜炎で温痛を訴える方は多い。そのメカニズムは解明されていないが、こう言ったところにあるのだと思う。

とりあえずこのひどい温痛を軽減させるために、咬合調整を行った。
前後の歯をほぼ同じくらいの高さに揃えた。

これで、温痛は消える。

この症例とは関係ないが、温痛には3つ目がある。細菌感染等により歯髄の炎症がひどくなり歯髄が壊死し始めると腐敗ガスが発生する。このガスが温度の高い飲食物により膨張し、まだ生きている部分の神経を圧迫し痛みを感じる場合だ。
このケースでは温痛を感じるまでに時間差があるので判別ができる。

 - 削らない・抜かない歯科治療, 外傷性咬合