原発推進がやめられないわけ 経済産業省「電力互助会」の暗躍2

      2017/03/20

脱原発・新エネルギー
7月13日 11:05

経産省 と電力業界(原子力)との癒着の構図がわかりやすいかたちでうかがえるのは、「天下り」である。経産省は、東電など9電力全社と電源開発に天下りを送り込むのはもちろんのこと、電力会社を会員とする財団法人や社団法人を山のようにつくり上げ、そこの専務理事としてOBの面倒を見てもらっている。典型的な「専務理事政策」である。
専務理事政策とは、規制を武器に役所が天下り法人を設け、そこに退職したOBを押し込み、なおかつ補助金や委託研究費などの名目で税金を垂れ流すことを言う。電機から自動車、化学、流通など所管業界が幅広い経産省には、この種の天下り法人が数百というオーダーで存在するが、なかでも有力な天下り分野が電力・エネルギー業界である。経産省所管の約60の電力・エネルギー関連の天下り団体に、100人を超える退職者が天下っていることが明らかになっている。
こうした天下り団体に、エネルギー関連の国費がピンハネされているのだ。電力・原子力に関する予算は、エネルギー特別会計のエネルギー需給構造高度化対策費約2,800億円、電源三法交付金などエネルギー特会の電源開発促進勘定約3,700億円、文部科学省と内閣府の原子力予算約2,500億円―の総額9,000億円もある。経産省の一般会計分も含めれば、総額は1兆円に近いだろう。そのなかから、天下りの人件費や彼らの遊興費が捻出される仕組みだ。
たとえば、実力派次官だった村田成二事務次官が理事長に天下った独立行政法人「新エネルギー・産業技術開発機構」(NEDO)には、補助金、委託費、運営交付金などで総額3,000億円近くも投入されている。少なくとも4人も天下りのいるNEDOは、「第2エネ庁」のような機関で、ふんだんに流れ込む国費を、電力・エネルギー業界に研究助成などの名目で支出する。どのプロジェクトにいくらだけ流し込むかについては、NEDOの裁量の余地が大きく、したがって業界に睨みを利かす機関とも言える。
村田氏は02年に電力自由化を武器に業界と大立ち回りを演じ、同時期にあった原発データの改竄事件を機に、ついには東電の荒木浩会長と南直哉社長を辞任に追い込んだ大物次官である。要は、業界に対してデカい顔をしたいのだ。そんな村田氏のプライドをNEDO理事長職は満たしてくれる。

経産省なりエネ庁なり役所が直接業界に支出すれば済むものを、わざわざNEDOという別組織を設けて支出する仕組みにしているのは、そこに天下りのポストを確保でき、しかも業界に睨みを利かすことができるからだ。数十年をかけてできあがったそうした仕組みを、菅首相の思いつきのようなトップダウンのエネルギー政策によって破壊されてはかなわない。だから経産省は、OBを含めて気が気ではないのだ。
(つづく)

脱原発・新エネルギー
2011年7月14日 07:00

そんな役所の不安をよそに、菅首相はこれ見よがしに新エネルギーへの転換を、政権への求心力を高める材料に使おうとしてきた。6月7日には政府の新成長戦略会議のなかで新エネルギー戦略の策定を謳い上げ、玄葉光一郎国家戦略担当相を議長とする「革新的エネルギー・環境会議」を設置することを決めている。エネルギー政策の立案はこれまで経産省の総合資源エネルギー調査会が担ってきたが、これは明らかに官邸主導による経産省外しである。
「革新的エネルギー・環境会議」の発足に先立って6月3日に行なわれた副大臣級の準備会合では、首相の信任が厚い福山哲郎官房副長官が「総合エネ調に任せて、これまでの発想でつくらせて良いのか。首相が言うような発送電分離という言葉も入れるべきだ」と、反経産省・反東電の姿勢を露骨に鮮明にしている。? ? 首相は6月12日、「自然エネルギーに関する総理有識者オープン懇談会」を官邸で開き、意気投合するソフトバンクの孫正義社長やミュージシャンの坂本龍一氏(ビデオ参加)ら5人を集めている。著名人の人気にあやかって政権延命につなげたいという首相のさもしい戦術ではあるが、興に乗った首相はこの場で、資源エネルギー庁ならぬ自然エネルギー庁の設立を披露している。? ? もともと市民運動出身の菅首相にとって、原発依存度の高い従来のエネルギー政策を転換するというのは、当然の方向性だ。首相は再生可能エネルギーの導入の旗を振るとともに、

それに対して経産省や東電など既存電力会社が邪魔をしているとして、意識的に彼らを悪者に仕立てあげている。全共闘世代特有の手法である。強いスローガンを掲げて耳目を引き付けて求心力を高め、打倒すべき敵を明示することで単純な勧善懲悪の図式に追い込む。このやり口によって叩きやすい相手が、経産省である。
原発事故後の早い段階で、首相は原発推進の経産省・エネ庁の傘下に、安全規制を担う原子力安全・保安院があるのはおかしいとして、保安院の分離を唱えている。政権内には保安院を分離独立させて原子力安全委員会と統合し、そのうえで環境省の傘下に原子力安全局としてぶら下げるという構想も唱えられている。
こうした経産省分割論が表面化するなか、経産省の事務方官僚にとっては頭の痛い出来事が起きた。エネ庁次長としてエネルギー政策の取りまとめ役である木村雅昭氏が、エルピーダメモリでインサイダー取引をしていた疑いがあり、証券取引等監視委員会に6月上旬から強制調査を受けていたことが明らかになったのだ。
(つづく)

脱原発・新エネルギー
2011年7月15日 07:00

木村氏は、原発推進と電力会社の経営体の維持を掲げる守旧派官僚で、官邸の攻勢を押し止める役目を担ってきた省内の重要人物である。その彼がエネ庁次長に着く以前の、経産省商務情報政策局担当の審議官時代に所管していたエルピーダで、インサイダー取引をしていた疑いが持たれている。
当時彼は台湾まで出向いてエルピーダの提携先探しに関わり、エルピーダの救済を決めた責任官僚である。当局の調べに対して木村氏は、「取引口座は妻名義で妻がやったこと」「台湾との提携などは日経が報道して周知の事実になった後で株を買っており、インサイダーではない」と主張しているらしい。しかし、それをエルピーダへの出融資を決めた政府系金融機関の幹部は、「台湾との提携話は経産省が中心になってやっていて、彼しか知らない。自分でリークして書かせて、周知の事実を演出したのではないか」と自作自演を疑う。

これで経産省の幹部官僚のインサイダー事件は、05年3月に中原拓也係長が担当していたチノンの再建に絡んだ事件(中原氏は在宅起訴され有罪判決を受けた)、05年6月に判明した中富泰三大臣官房企画室長が支援決定前のカネボウの内部情報を知って役所の裏金2,400万円をカネボウ株取得に投じたケース(中富氏は経産、法務両省の官房長クラスの話し合いによって、刑事罰を受けることはなかった)に続いて3件目である。しかも、経産省は直近には、西山英彦審議官の臨時採用職員との不倫騒ぎも表面化したばかりでもある。不祥事続きなのだ。
そんなさなかの6月24日、松永和夫事務次官は「日本中枢の崩壊」(講談社)を著した古賀茂明氏(大臣官房付)に、7月15日付での早期勧奨退職を命じた。東電に関して減資や債権放棄、経営陣の総退陣といった厳格な整理的な手法による「東電処理策」をしたため、そのコピーが政府内の要路に幅広く出回ったことでも知られる改革派官僚の1人だ。
彼は過去のインサイダー事件―とりわけ中富氏が絡んだインサイダー事件で、当時の経産省中枢、北畑隆生経済産業局長(後に事務次官)や石黒憲彦官房総務課長(現商務情報政策局長)らがどう関わり、どうもみ消したかに詳しい人物である。「古賀をこのまま置いておいては面倒なことになる」―そんな計算が松永次官ら事務方中枢にあっても、不思議ではない。
組織防衛に走る経産省主流派は、異論派を切り捨て省内言論の統制に血眼になっている。菅政権による攻撃をかわすためである。そして菅首相退陣後、何食わぬ顔で電力と原子力の護持の旗を高く掲げるのだ。天下り体制も、もちろん維持継続である。ただ菅首相退陣まで、「死んだふり」をしていればいいだけである。
(了)
【尾山 大将】

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