もったいない学会論説シリーズ1

      2017/02/26

この論説は震災以前のものですが、持続可能な社会をめざしてどのように行動すべきか考えさせられます。
持続可能というのは、具体的にどういうことかというと、
自然エネルギーのみで人類が生きてゆくということですので、
使用可能エネルギーは現在の日本の1/10になると思っていただいて大きくは外れないでしょう。

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ーーーー全文引用ーーーー

改めて「危機突破の戦略」
旭岡勝義
2010年12月28日 11:43
国家戦略も企業戦略も、ある種の継続的な環境―たとえそれが複雑さを増し、不確実性が避けられなくとも―への信頼性を基本にして考えるという枠を、なかなか超越することができない。勿論、変化の時代、イノベーションの重要な時代として認識されていたにもかかわらずである。経済危機は、金融と実体経済の相違を楽々と乗り越えた。しかも、金融工学という現在考えられる最高レベルのリスク分散の科学を駆使した結果であった。経済の崩壊は極めて早い影響を国際的に与え、実体経済もこれまでの打ち手をなくして、当面の人件費や経費削減に追われ、国家も経済再生のための資金注入政策やセイフティー政策を緊急に行いつつ、環境関連投資等、次世代のイノベーションに向けて、転換しているのが実情である。しかし、こうした危機は、新たな機会であることも事実である。経済危機によってもたらされた緊張の結果、これまでのコアとなる諸活動の継続が絶たれるが、一方危機の結果もたらされる状態を乗り越えながら、新たな転換や新たな環境変化や新しい芽が起こる。経済危機の起こる以前から、石油ピーク問題があり、現在の生産システムによる需要の拡大が石油生産量を越えており、石油価格の高騰をもたらし、同様に希少資源や穀物の価格高騰等有限資源の危機的な状態や温暖化等の気候変動問題、世界人口の増加による食糧問題等底流にはいくつかの世界的な課題を内包した時代でもある。その点を踏まえて、経済危機以前から、世界的には、イノベーション政策、イノベーション戦略の重要性が検討され、時代を乗り切るためには、新たな変革や知の再編が緊急であった。米国の科学技術や新規事業への重点投資や人材育成投資、EC統合等の新たな市場創出やアジアの高付加価値産業育成や事業の重点投資等すでに長期視点に立って、戦略の展開がなされていた。我が国も当然長期視点の上で、政策や戦略の転換がなされなくてはならなかったのである。
その前提の上で経済危機の克服を踏まえて、危機突破の構造を再構築する上で、検討するべき戦略は、
1.有限資源国家として、持続的な成長を可能にする有限資源の最適活用による低エネルギー社会の実現と
高付加価値産業の創出とその転換である。
石油、エネルギー源、希少資源等の使用の最小化・最適化を進め、自然エネルギーや再生エネルギーの開発を推し進め、我が国全体が低エネルギー社会の実現を図ることである。
我が国の知恵の技術である資産を発掘し、また再開発を行い、生活全般の低エネルギー社会への展開を強化することが重要になる。ものづくりの現場においても低エネルギー生産システムや設計段階からの低エネルギー製品開発、リサイクル条件を加味したものづくりや生産輸送システム等重点的な開発が必要である。さらに中国、インド等アジアの発展途上国の展開は迅速で、これに対応するためには「限界突破型」の新たな高付加価値技術事業(環境技術、省資源技術、ナノスケール商品技術、画像・制御・インターフェイス等きめ細かな感性置換技術、微細加工技術、再生医療技術、脳機能解明技術、ITC技術及び応用技術、知の統合領域技術等)の創出や顧客への価値を創造する「持て成し」や「気遣い」等日本人の特性を基本とするサービス産業や、その生産性高度化を含めての世界競争戦略としての産業育成等、国民の付加価値を高め、雇用と安定を図る産業・事業の創出が急務である。さらに、知識社会を構成する高度な知を活用するソフトやコンサルティング等の専門知識産業の創出である。専門知識は、農業や林業等第一次産業での新たな科学技術の活用等産業全般に亘るものであり、有機的な産業の知の連携が必要になってくる。この産業連携は新たな産業連関表を基本にして、知のトランスファープログラムとして強化実行していく必要がある。このような社会インフラや産業転換を産官学が一体となって推進していく必要がある。
2.豊かな自然資源の再開発と豊かに生きる生活の連携をする。
我が国は、世界的にも自然資源を比較して、大きな資産を保有している。取り囲む海洋を含めて、新たな国土開発をすることが重要である。現在海洋国家としての体系的な開発もまたそのための教育体系も存在しない。個別の開発のみではなく、海と陸が一体となっての整備計画等が必要になっている。我が国は、森や山や海等美しい景観に恵まれ、四季折々の変化も豊かで、気候の温暖な風土である。こうした、豊かさは、人工的には作りえないものであり、そこに育まれた風土は、人類の財産である。しかし、戦後こうした日本の美しさを認識し、国民の豊かな生活基盤の構築の視点を欠いた国土計画でしかなかった。環境問題や自給率問題及び資本主義の弊害が叫ばれる今日、取り戻す価値として豊かな自然資源を地域のあり方を含めて、再開発するべきである。しかも開発の基本は、経済成長を第一義とするのではなく、自然資源と人生の価値を目標とするものでなくてはならない。現在国土総合計画は存在しないが、政権交代を機会に、海洋開発を含めて、各地域の自然資源の再評価と自然資源を国民の新たな長期的投資対象の資産として位置づけ、都市及び地域との連携や生活ネットワークを定着させ、将来は都市からの移住を推進することで、生命圏エリアを創造し、広域社会インフラネットワークとして、新たな生活基盤形成及び新たな文化の特性を醸成する場として確立させる必要がある。また地場産業を新たな科学技術連携を含めて形成し、生活と研究及び産業の両立可能な「知恵技術広域創造圏」として、再構成することを実施する。高齢社会での地域の衰退を、経済的な衰退にとらわれることなく、自然資源を豊かに活用する生活圏として捉え直し、自立したコミュニティーの実現を行う。
そこでは、インターネットを駆使した情報交換、遠隔医療システムによる健康診断や維持、Eラーニングでのキャリア教育や新たな職業の指導と創出、TV会議システム等世界的な知の交換、自然エネルギーを動力とする社会インフラシステム、コミュニティー別の交流の場や未来課題解決のためのフューチャーセンター、スポーツやアミューズメントを通しての年齢を超えた交流や相互教育、若年層の多様な教育の実践と創造性開発の思考土壌の構築等、新たな多様な社会観の共生する構造が、生きる意味合いを深め、豊かさの目標や意義を深めることで、なお一層長期的な危機対応能力を強化することが可能になる。国民ひとりひとりの自立こそ、本質的な危機突破への建設的な目標設定と実現の能力を高めることになるのである。
3.さらに、教育の変革と人材の育成を本格的に進める。
危機突破を行うためには、これまでのパラダイムを変革する発想と実行する意思や志が大きな梃になる。我
が国の教育は、基本的には底上げであり、平均化した人材育成を目標にしてきた。しかし今後の環境激変下の教育は、未来課題に対して、新たな解決策を発見し続ける能力や執念、既成の専門分野や既成の学問体系のみでなく、異質な知を融合する能力や再構成する創造的な体系化の能力が必要になる。したがって、初等教育から本質的なものを見抜く能力、比較検討し自ら結論を導くための情報収集と分析能力、多様な思考が存在し、その多様性が現実の現象を解決する的確性を見極める能力、異なる意見を交換しながら説得性のある結論に導く能力、国際的な知の交換に必要な基礎的な教養、歴史観や哲学や芸術に対する志向能力等をカリキュラムとして編成し直し、中等、高等教育では、自らの研究の深堀や大学教育と連携した新たな学的成果のトランスファー等常に知的好奇心を揺さぶり、社会的価値の形成や未来課題解決を推進するプロセスを伝達し、進路指導や問題解決の専門家による支援システムを構築し、社会や世界に開かれた教育体系を構成することが緊急である。人間の能力の発展や興味のあり様は人によって異なる。この相違は、集団教育では困難なところもあり、現在の画一的な学校制度を多様な能力開発、人材開発の場として、蘇らせることが必要になる。さらに大学教育も専門性の弊害が指摘されて久しい。大学及び大学院において、科学技術の個々の問題が複雑化しているだけでなく、問題間の相互作用がより複雑化しているため、従来の分化され専門化された学問体系や知見では、解決が極めて難しくなっている。しかし、知識の深まりは、分化され専門化されてこそ、極められ深められてきたことも事実である。したがって、問題解決には、より深い専門知識とその組み合わせ(融合、統合)または横断的な知識が重要になっている。
では一体今後または未来の課題を解決することの出来る知識は、いかにして形成育成するすることが、可能になるのであろうか。
まず必要なことは、専門知識を問題解決に向けて上手く使いこなすマネジメント(方法・人)能力であり、専門知識を融合し、新たな問題解決の知識が創造され、これを体系化することであり、問題解決のプロセス及び解決結果から導き出される新たな蓄積やツールの構築が必要になる。さらに、企業等の現場では、科学理論や知見(基礎科学及び応用科学)と技術の融合が、緊急でもある。国際競争に打ち勝つためには、社会価値と科学知見及び先端技術との統合による新たな価値の創出が求められ、また新たな社会インフラの変革
(ソーシャルインフラストラクチャー・チェンジ)も重要なファクターとして、認識される必要がある。このような、専門分野を深めると同時に、新しい課題の解決に対応する俯瞰的な知識や知を融合・統合する方法を、現場の課題解決のプロセスを実践させることや、企業においてもプロジェクトの経験等を行いながら、リスクを負いつつ、夢の実現に向けて苦闘する経験を積み重ねること及びその風土を伝授することが必要である。
今や世界はオープンイノベーションの時代であり、世界中から優秀な創造的解決型人材を集積し、国際的な競争戦略を乗り切るための方策が図られている。人材の集まる所に、高付加価値の集積が出来、持続的な課題解決の頭脳ネットワークが形成されようとしている。
我が国は、人材を支援する環境を緊急に整備し、知の宝庫を形成することが緊急でもある。

つづく

 - ドクターのつれづれ。, もったいない学会