もったいない学会論説シリーズ2

      2017/02/26

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4.評価システムの変革と評価人材の育成及び課題解決ノウハウの集積等の新たな仕組みを作る。
これまでも我が国はいくつかの危機的状態に直面して、これを克服した経験がある。だが、常に立ち上がりが
遅れているということでもあった。また危機的な状態に対応して、どのような打ち手を行い、その結果がどうであったのかのプロセスの記録や分析が明確に行われないことは、国家や企業の重要事項の評価システムが十分に機能していないことでもある。我が国はいわゆるシンクタンクの育成される土壌が脆弱である。米国等のシンクタンクは、政策策定支援や政策の評価を競争する仕組みでもある。その財政的な基盤は、寄付金や献金が半分以上を占めている。我が国は、こうした寄付金や献金の優遇措置や知の成果物への資金提供の習慣が少なく、シンクタンクの育成が難しい風土を形成している。政府官庁の政策評価が開始されているが、あくまでも第3者評価ではなく、内部的な評価であり、また評価の基準もあいまいな尺度となっている。政策に限らず、大学や研究機関、国が推進する科学技術テーマの評価、莫大な予算が投入される公共資本投資の評価等専門的な第3者の評価を行うことが新たな課題解決能力を醸成させるためには重要である。評価において、従来の視点を脱却し、目標及びビジョンによる視点や、イノベーション戦略に基づく、新しい総合的な視点で構成される必要がある。新たな発展は、当然新しい社会概念や学問体系を必要とする。特に総合的な俯瞰的な観点を必要とし、人間的な観点や地球的な観点が確立され、人類や生命の尊厳を第一義とする世界観が導入されなくてはならない。こうした観点は、知の成果を取り入れ、長期観点によるあるべき目標に向っての成果の評価の基本となる。我々はこの重大な時期に、時代の転換や変化に対応するイノベーションの重要性を認識しながら、視点や方法を模索することを開始しなくてはならない。
評価のためには、中立的な評価能力と評価できる人材の育成が不可欠でもある。
教育機関や研究機関、また官公庁、企業を通して、プロ集団が知恵を結集できるシステム及び仕組みを持ち、評価体系を確立するために、評価に必要な研究やノウハウの蓄積を切磋琢磨できる環境が重要でもある。
企業は、基本的には、売上高や収益等の結果評価がなされ、株価等市場評価が反映したり、経営者自身も業績に照らして、外部からの厳しい評価を受ける。しかし経営者の危機克服のプロセス、厳しい環境やグローバルな経営における戦略内容や経営改革及び迅速な意思決定内容等を評価蓄積する仕組みは少ない。企業においては、危機に直面して実施した戦略等を正しく継承し、有効な戦略の構造や状況に合わせた戦略と実施のノウハウの蓄積は必要である。こうした戦略の有効性の蓄積が事業特性も加味して、積み重ねられる必要がある。さらにトップ人材の流動化は、今後の経営の基盤として重要である。リーディング産業の立ち直りが遅れている中で、次期産業育成にはすぐれた経営者の必要性が高まり、このためには、トップ経営者の流動化によって、経営者陣容の強化がなされなければならない。
5.社会インフラ構築戦略と新産業創出を含む企業戦略との一体的推進を行う。
米国や欧州でのイノベーション戦略は、情報通信技術、バイオ技術、ナノ技術、環境技術、新素材新機能技術、シミュレーション技術、ソフト技術等の進展とその応用による社会課題解決のための融合テーマの開発を拡大させ、また戦略遂行への資金配分や人材育成を強化している。またこうした環境変化に伴い、複雑性が増し、新たな創造的な課題解決のための社会インフラの創造がますます重要になってきている。企業の戦略遂行においても、一企業の経営資源ではスピーディーな課題解決が困難になりつつある。そのためにはグローバルな経営資源の調達が行なわれ、知の再配置や人材の流動化を進めてもいる。大学においても、知の源泉としての強化が推進され、分野融合的な新領域拡大やカリキュラム強化が行なわれている。しかも新たな産業育成や事業育成のための産学官連携等の交流の場も多く創造されている。今後ますます世界危機を克服し、未来文明を構築するための新たな知が必要な時代でもある。人材もメタ・ナショナル化しており、世界から優秀な人材の集積を強めているのである。世界的な創造人材争奪や人材交流が国家戦略として行なわれていくのである。また多視点で、多面的な知を集積することが必要不可欠になっている。
このことは、専門分野の限界を越えて、横断的な人材のマネジメント要素が重要な役割を果たしていくことが予想されるのである。今後もますます世界的な重要課題を乗り越え、新たな産業を創造するためには、多くの技術や人材の活用が不可欠である。つまり今後の新たな世界の創造には、科学・技術、社会価値を結合する広範囲の知識の融合・統合と横断的な結合のためのマネジメントが必要な時代である。
産業政策も、分野を融合・統合し、総合的な政策を策定することが重要な要素となる。我が国の政策は、政策分野の枠を細かく区分し、境界領域を狭くした政策策定を行うことで、効率化や予算等の明瞭な達成区分を明示する傾向にあった。しかしながら課題解決の政策は、俯瞰的横断的な視点に立って、個別分野の枠を越えて、総合的統合的な政策の方向付けがむしろ必要で、その政策目標を明示した上での新たな調整や分野創造を含めての推進の仕組みが求められる。したがって、専門分野を越えた多面的な視点や人脈を持ち、多くの専門分野を活用して課題解決をマネジメント出来る人材育成が国家戦略として強化されることが緊急なのである。すでにこうした創造的人材の世界的な獲得競争が激化しているが、人材集積のための研究環境、教育環境、都市生活環境の整備や充実、優遇措置や制度や税の仕組みの大きな変革をし、知の獲得の条件を作り、重要な競争要素を位置づけることが必要である。人材や企業は、世界的に事業のための成功条件を作り上げることができるかを見極めつつ行動や展開を行っている。我が国の社会インフラが、こうした条件整備を戦略的に行い人材の知の集積を構築することが重要である。
6.未来価値創造の戦略を実現する。
国家戦略及び企業の経営戦略の遂行にとって、今後の未来価値の形成に対応し、その価値を把握し、どう迅速に実現するかが、優位な競争条件を構築する決め手でもある。
未来価値を創造するマネジメントは、未来価値を設定し、実現すべき夢としての目標の強さにまで設定した未来価値を熟成し、国家及び企業の将来の進化と実現遂行能力を具体的体系的に把握しながら、建設的に基本構造の成功ステップをどう意識して、経営の変革を迅速に行うかが重要になってくる。国家や企業は、取り巻く環境や競争環境において、コアとなる未来価値創造のための資産やコアとなる諸政策及び経営活動を戦略遂行プロセスとして、組織的に構築することが今後の未来価値創造能力であるが、この能力との関係付けがどう変化しているのかを見極めることが必要になる。先ず、実現プロセスをある程度実行することによって、市場を構成する組織主体のもつ役割や機能に変化が現れる。
そこでは役割や機能が安定的な存在から、国民や顧客との関係の不安定さが生じ、新たな役割や機能の再認識が開始される。それによって、政策や企業の諸活動の中のコアとなる活動に変化が生じるのである。この未来価値の実現すべき内容の変化に経営主体が注目しなければ、未来価値実現のコア活動能力を強化することはできない。そこでは安定的な役割や機能から、やがて変化に応じて、新たな組織主体も加わり、代替となるべき機能を投入しながら、次第に未来価値を実現するための主力となる機能を構築するというプロセスが追加されるのである。この実現能力強化を戦略的な思考で行なわない限り、やがて、世界的な競争からは大きく立ち遅れることになり、企業でいえば、技術構築力、製品コンセプト構築力、価格決定力、市場顧客支配力、販売ルート編成力、情報収集力、新知識の導入、テリトリーの構成力、顧客コンタクト力等を次第に喪失させることになるのである。
特に企業においての未来価値実現の経営構造は、経営の仕組みに、未来価値創造の戦略を支える要素として、事業環境の見極め、技術の目利き、戦略連携、事業競争条件の強化支援、市場立ち上げのギャップの解決等のバックアップの仕組みが必要である。
戦略推進には、事業モデルの構築、市場検証、知の統合、実現条件のインフラ整備(国際標準化等)、コア技術(融合技術)強化、資源展開の整合性、高付加価値化、実行プログラムの整合性等の経営構造を強化することが重要になる。当然、開発プロセス、生産製造プロセス、販売サービスの方法の革新等目標実現に向けての新たなプログラムが必要である。この準備とともに、さらには、新たな競争条件や競争相手の出現等によって、これまでとは異なる経営モデルが緊急な時期に備える必要がある。
我が国は、今未来価値を創造するための鋭い感覚を磨き、「志」を強くし、実現のためのプロセスを風土として、文化として、強固に推進するため、知の結集を行わなければならない。
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