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I歯科医院の高楊枝通信。

脱石油に向かって動き始めたアメリカと動かない日本 – 山田 高明

2017/02/26
 
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すでに石油の減耗が始まっており、その生産ピークは2006年頃、2015年頃にはオイルクランチ(消費量=生産量:需給逼迫)が起こり、2030年頃には産出量は半分以下になり、産油国は輸出をストップする。

アメリカではすでに国家戦略として動き出しています。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120127-00000302-agora-bus_all

新石油危機はすでに始まっており、現状のような石油依存を惰性で続けている限り、どうやら日本の衰退は避けられそうにない。もはや「可及的速やかな脱石油」以外に日本の生きる道はないようだ。

実は、日本が着実にその方向性を歩んできたのも事実である。一次エネルギーにおける石油依存率は、73年の第一次石油ショック時には77%強だったが、今では4割強にまで減っている。一応は40年かけて3割以上も依存率を下げたのだ。

では、今の脱却ペースを保てばよいのだろうか。残念ながら、スピードアップが不可欠なようだ。90年代後半から原油の輸入量が減少しているのに対して、逆に輸入費は右肩上がりになっている。つまり、「減らす以上に値段の上昇幅が大きく、かつその傾向が加速している」のが現実なのである。よって、業界に配慮した従来の「何となく脱石油」から、「より自覚的・戦略的な脱石油」へと国の舵を切ることが求められている。
しかも、悪い時期には悪い事が重なるもので、これまで依存度軽減の一翼を担い、一次エネルギーの1割程度を供給していた原発がトラブルを起こした。今ではその穴埋めのため、廃止寸前だった石油火力を復活させている有様だ。他方、エネルギー転換のために資金的余力が欲しいところなのに、財政は破綻寸前ときている。また、2011年で「貿易黒字時代」が終焉したらしいというニュースも入ってきた。どうやら、四十年以上に渡って黒字を稼ぎ出してきた日本の国力・産業競争力にも陰りが見えてきたのである。

だが、私が何より問題だと考えているのが日本人の「危機意識の薄さ」だ。動機が不足していては危機回避アクションそのものが始まらない。これはたぶん、私のよく知らない社会心理学の問題だと思う。

運転中、前方に崖崩れを発見したら、誰だってハンドルを切る。国家の行動も同じ。将来の危機を予見すれば、回避運動をとるのが当たり前だ。ところが、個人ではそれが容易くても、国家という大船に乗っていると、人はえてして盲目・鈍感になりやすい。

俗に「大船に乗った気」とはよく言ったもので、このままのコースでは氷山と衝突すると分っていても、「何とかなるさ」とか「他の誰かが対処してくれる」などと思い込み、自分を安心させようとする。すでに危険域に入っているのに、周りの人が妙に落ち着いているので自分まで“冷静に”なってしまうことを「集団同調性バイアス」、全体が危険だと認識していても自分だけは大丈夫と根拠もなく自己肯定してしまうことを「認知不協和」と呼ぶらしい。大震災直後の津波襲来の際にも多くの人々に見られた心理だ。人は国家という大船に乗ったことで責任感を失い、傍観者的傾向を示すようになる。集団的無責任の病理が悪化すると、警鐘を乱打する者を“船を揺らす秩序撹乱者”と白眼視さえする(※ただし、ハルマゲドン商法が絶えないので、騙されてきた人々にしてみればやむをえない面はあるが)。

このような日本の現状と正反対なのが、世界最大の石油輸入国であるアメリカだ(※日本は第二である)。これはある意味、エリートに率いられた社会と、集団の空気が事実上の至高権力である社会との違いなのかもしれない。外国の良い例を持ち出して自国を裁くという安易な真似は、個人的にあまり好みではないのだが、それでも2000年代後半からのアメリカの脱石油政策は実に明快で、ビジョンとリーダーシップ、そして何よりも戦略性がある点は称賛せざるをえない。

かつて“新保守”を自称し、世界の現状をホッブスのいう「万人の万人に対する闘争」、すなわちアナーキーで野蛮なジャングルになぞらえ、その中にあっては軍事力こそが秩序を保つ唯一の手段であり、よって悪者を叩き殺すことは正当であり、この論理を理解しえぬヨーロッパは仲間ではないと主張したPNAC(Project for the New American Century:アメリカ新世紀プロジェクト)は、公然と中東の軍事占領を画策した。それに基づいて実行されたのがフセイン・イラクへの攻撃であるが、この辺りに関してはその問題点も含めてすでに周知のことであり、改めて私などが触れるまでもない。ここで着目したいのは、占領政策の失敗が明らかになった「後」のアメリカの行動だ。

当時のブッシュ政権はネオコンをパージし、国務省系の人材を入れ始め、エネルギー政策を180度転換した。そして「2005年度版エネルギー政策法」を可決し、中東石油からの依存脱却を鮮明に打ち出した。以来、アメリカは17年度までに、主にバイオエタノールの導入拡大と燃費改善によってガソリン消費の20%削減を達成しようと動いている。

やはり根底にあったのは石油をめぐるエネルギー問題だったらしいが、道義性の話を抜きにすれば、今さらのように二つの点に驚かされる。第一に、当時のアメリカがかくも生存本能を剥き出しにし、なりふり構わぬ野蛮な行動に打って出たこと。第二に、当初の中東占領策がうまくいかないと悟るや、あっさりと戦略を翻したこと。アメリカにとって石油文明とは、自分たちを世界一の大国へとのし上げる原動力となった“成功体験”であるはずだ。だが、目的が失敗に帰すと、それすらも捨てる決断を下したのである。

皮肉ではなしに、自分たちに都合の悪い現実でも直視すること、国家の最高レベルで素早い意志決定を行うこと、国家のサバイバルに関して執念を持つこと、高度に戦略的であることなどは、日本の為政者とは正反対の姿勢であるといってよい。

次のオバマ大統領などはもっと強い危機感を表明している。11年3月末、オバマはワシントンのジョージタウン大学でエネルギー長官をはじめ多数のVIPを従え、アメリカのエネルギー安保に関する講演を行った。その全文がホワイトハウスのサイトで公開されているが、日本にとってもそっくりそのまま教訓となるので、要点を抽出したい。

「石油に重く頼る経済では、給油価格の上昇が全ての人々に影響を及ぼす。労働者、農家、トラック運転手、レストラン経営者、そして幸運にも車を持つ学生。(笑い)産業界はそれが彼らの最終利益を損なうと見なしている。家庭は車を満タンにする際、ピンチだと感じるだろう。すでに得ることに苦労しているアメリカ人にとっては、ガソリン価格の引き上げが暮らしに真に追い打ちをかける。痛ましい話だ。」(※拙訳)

「ガソリン価格が最終的に下落したのは、主として世界的な景気後退で石油需要が減少したからだ。(略)今や経済は回復しつつあり、需要も戻ってきた。中東の混乱を付け加えるなら、石油価格がもっと高くても驚くに値しない。」

「ポイントは価格の上下が歴史的には一時的傾向でしかないことだ。長期のトレンドに着目するなら、ガソリン価格は下落よりも上昇していくだろう。その理由は、インドや中国のような国々が急速に成長し、20億を超える人々がより多くの消費を始めているためだ。われわれがそうであったように、彼らもまた自動車を欲しがり、暮らしを少しでもよくするためにエネルギーの使用を欲している。需要の増大が供給よりもはるかに早まることは絶対確実だ。これはまったくの事実なのだ」

「素早い解決策などない。異なった見通しを語る者は誰であれ真実を語っていない。安全かつ廉価なエネルギーの未来のための長期政策について真剣にならない限り、われわれは石油市場の変動の犠牲者であり続けるだろう」

「アメリカ合衆国は、われわれの長期的な繁栄と安全保障を、結局は尽きてしまう、又は枯渇以前に地下から掘り出すのがどんどん高価になっていく資源に、賭ける余裕などない。(略)今こそエネルギーの未来を安全にするために行動すべき時だ。」

「今日、私は新たな目標を発表したい。それは合理的で、達成可能で、そして必要なものだ。私が就任した当時、アメリカは日に1100万バレルの石油を輸入していた。今から十年余以内にその三分の一をカットする。それは達成できるものだ。(拍手)」

「われわれは世界の石油の約25%を消費しているが、埋蔵量のたった2%しか所有していない。合衆国の石油生産量を倍増させたとしても、まったく届かない。よってアメリカのエネルギー供給を真に安全にする唯一の方法は、石油依存を永続的に減らすことだ。われわれは石油使用を減らすために利用効率を押し上げる方法を見出さねばならない。」

かくして、オバマ大統領は、その手段として、天然ガスやバイオ燃料の導入、自動車燃費の改善、EVの普及と二次電池の開発、電力へのクリーンエネルギーの導入、省エネなどの政策を取り上げ、数字を交えながら具体的に説明していく。

もちろん、ブレーンが書いた原稿ではある。ただ、重要なのは、もう中東の石油に頼ってられないと、指導者自ら大衆に向かって、明確なロジックを駆使して呼びかけている点だ。私は率直にアメリカのこういう点が羨ましい。うつむいて作文の棒読みをするどこかの国の首相と比べると、まったく格が違うと言わざるをえない。

いずれにしても、この演説でも触れられているように、「新石油危機」自体はすでに顕在化している。問題はその現実を自覚して、どう対処するかである。国を挙げて積極的に回避しようとしているのがアメリカだ。彼らは“強盗”失敗後、エネルギー問題を手っ取り早く解決する方針を諦め、極めて理性的に地道な方法を実行しつつある。そのために、大統領自ら「石油の消費量を減らそう」と、人々に向かって演説している。

対して、日本はどうか。ブッシュ政権のエネルギー政策大転換よりも後に策定された経済産業省の「新・国家エネルギー戦略」は、石油消費に関して以下の二つの目標を掲げている。
第一、2030年までに石油依存度を40%以下とすること。
第二、同年までに運輸部門の石油依存度を80%とすること。
これではとうてい「脱石油」の方針とはいえない。「依存度は遅々として低減しましょう」という消極的な方針でしかない。この調子では2030年までに富を奪われ尽くした日本は世界から同情される国になっているだろう。私の意見を言えば、問題の根幹は運輸部門対策だ。バイオ燃料の混合や燃料の多様化政策は不必要だと思う。同省にはなぜか燃料電池車と水素エネルギー社会に非常にこだわっている人々がいるが、よく考えてほしい、こんなものは不要なのだ。機会を改めるが、日本はEV一筋で必ずや大正解となる。

もしかして、経済官僚OBが石油マフィアの一員だから、ちょうど電力業界に対する配慮や遠慮と同じことを、石油業界に対してもせざるをえない立場なのかもしれない。一方の政治家は頼りにならない。その場の思いつきやリアクションでエネルギー政策を吹聴するが、長期的な視点に立って具体的に戦略を練ることができない。なぜなら、そのために必要な知識や能力をもった人がほとんどいないからだ。それを唯一有する経済官僚に、日本は昔からエネルギー政策を丸投げしてきた。今まではそれでよかったかもしれない。だが、これからは脱石油以外に日本が生き残る道はない以上、国のエネルギー戦略が一省庁の天下りや省益によって足枷をはめられたり、歪められたりしてよいわけがない。

企業と同じように国家もまた新たな環境に適応できなければ衰退していくだけだ。来るべき危機を自覚し、戦略的な姿勢で臨むのか、それとも自身の根源に関わる問題をあくまで黙殺し続け、成り行きに任せるのか。日本は岐路に立っている。アメリカをはじめ日本以外の先進国は、すでに「いち早くポスト石油文明に移行した国家こそが21世紀の勝ち組となる」と考え、行動しているように思えてならない。

最終更新:1月27日(金)9時36分

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