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やっぱり期待はずれの「世界エネルギー展望」IEAの本音と建前

2017/02/26
 
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世界エネルギー機関(IEA)が11月10日に発表した年次報告書「World Energy Outlook 2009(世界エネルギー展望2009)」は、今年も、期待外れの内容だった。

IEA事務局長の田中伸男氏〔AFPBB News〕

OECD(経済協力開発機構)枠内にあるIEAの報告書は、日本をはじめ加盟国のエネルギー政策の立案に影響を与える。それだけに、毎年この時期になると、各国のエネルギー専門家が注目する――と言いたいところだが、年次報告書が「政治的に脚色された公式発表」に過ぎないと冷めた目で見ているエネルギー専門家は多い。

そして、政治的な脚色は、現代文明の根幹を支える石油の見積もりに関して特に顕著である。今年の報告書でも、既存のエネルギー政策を継続すれば、石油や石炭などの化石燃料は、2030年時点でも全体のシェアの3分の2以上と、引き続き最大のエネルギー源の地位を維持するとしている。

石油供給のピークはいつ訪れるのか?

IEAの発表に懐疑的なのは、欧米の石油メジャーなどで実際に油まみれになって石油探査を続けてきた石油地質学者に多い。その代表格が、米テキサコ(2001年に米シェブロンが買収)や英BPなどで40年以上にわたって油田を探し続けてきたコリン・キャンベル(Colin Campbell)博士だ。

石油のピークは、もう、すぐそこまで来ている〔AFPBB News〕

キャンベル博士は、世界中の油田を精査した結果、在来型の石油の供給量は既にピークを迎えているとする「石油ピーク」論者だ。キャンベル博士は、仲間の研究者等と共に2000年に「石油ピーク研究協会」(ASPO=the Association for the Study of Peak Oil and Gas)を設立、「石油のピークは2010年以前に訪れる」との警鐘を発し続けてきた。

石油に関しては、一般的に「枯渇」(running out)が問題視されがちだが、エネルギーの専門家にとっては、「枯渇」よりも、供給ピークである「減耗」(depletion)がいつ始まるかが大きな関心事だ。従来は、石油の需要の増加に合わせて供給を増加させることが可能だった。しかし、減耗が始まれば、そうはいかない。「枯渇」する前の段階で、人類は、需要に見合う石油を供給できないという、初めての事態に直面しようとしている。

石油生産は、物理的・技術的制約から油田の可採埋蔵量の約半分を採掘した時点で生産のピークを迎え、その後、徐々に減退していく。陸上油田でも、海底油田でも、例外なく、いつかはピークを迎え、減耗期に入る。各油田の生産量はベル型のカーブを描くことになるが、それは、地球上にある再生不可能な資源の宿命と言ってもいいだろう。

IEAの本音と建前

油田は可採埋蔵量の約半分を採掘した時点で生産量のピークを迎える〔AFPBB News〕

もちろん、米エネルギー省やIEAも、石油生産にピークがあること自体を否定していたわけではないが、これまでは「ピークは2030年頃」などと、かなり楽観的な見積もりを出していた。

ところが、ここ数年、予測を前倒しする傾向にあり、ASPOとの距離は徐々に縮まりつつあった。しかも、IEAの研究者がメディアとのインタビューなどで示す見解は、実はキャンベル博士ら石油ピーク論者とほとんど差がない。

例えば、「世界エネルギー展望」の取りまとめ責任者であるビロル(Fatih Birol)博士は、2009年8月に英インディペンデント紙のインタビューに応じ、「世界の主要油田は既に生産ピークを越え、世界全体での生産ピークも10年ほどで訪れる」との見解を示した。

また、「既存油田の生産の減退率は6.7%で、仮に需要が緩やかであっても現在の生産量を維持するには、新たに4つのサウジアラビアを発見しなくてはならない。2030年までの間に中印などの新興国需要に対応するには、6つのサウジアラビアが必要だ」と述べている。

個人的見解とはいえ、IEAの中心人物が「石油ピーク」について明言することは極めて珍しい。石油ピークについては、1950年代から専門家の間では長年論争が続いてきたが、楽観的な見解を示し続けてきたIEAのような国際機関の研究者と伝統的な石油ピーク論者との主張にほとんど差が見られなくなってきた。論争は収束しつつあるのだ。

さらに、発言のタイミングがちょうど2009年版報告書の取りまとめ時期と重なっていたため、エネルギー専門家の間では「今年の報告書は、従来とは違う現実論が盛り込まれるのでは」との期待が高まった。ところが、出来上がった報告書は、相変わらず楽観的な「公式発表」が繰り返されただけだった。

米国の圧力で歪められた報告書

そんな中、英ガーディアン紙は、IEAの複数の内部告発者からの情報で、「2009年版報告書は、米国からの圧力で歪められた」という記事を掲載した。あるIEA幹部は、「パニックを引き起こすことを恐れて、米国は既存の油田の減退率を低く評価し、新規油田の発見を過大に見積もることに積極的な役割を演じた」と告白。

2009年版報告書で、2030年の世界の石油生産量が日産1億600万バレルになると予想していることについても、「多くのIEAの関係者は、日産9000万~9500万バレルですら不可能と考えているが、そうした試算の公表がパニックにつながることを恐れている」ことを明らかにした。

結局のところ、研究者の本音は、政治力によって封印されたということなのだろう。

デジタル化時代に入って、技術転換のサイクルが短くなっている。例えば、音楽再生はカセットテープから、CDプレーヤー、MDプレーヤーと変化していったが、MDなどはほんの短い期間で消え、今や、ネットで購入して、携帯電話で音楽を聴く時代だ。

原子力発電所の燃料となるウランも2050年にはピークを迎える。石油からのエネルギーシフトの本命とは言い難い〔AFPBB News〕

しかし、エネルギーシフトは、技術シフトよりもはるかに長い時間を要する。過去、最も短い期間でエネルギーシフトが行われたのは、木材から石炭への転換だった。それでも75年を要しており、エネルギー効率的に明らかに有利な石炭から石油へのシフトも約100年を要した。

さらに悪いことに、我々は今、石油よりも有利な1次エネルギー源を知らない。原子力発電の燃料となるウランのピークも2050年頃訪れるとの研究報告があり、プルサーマルなどの資源再利用は技術的課題を解決しきれてはいない。人類史上初めて、今よりも有利なエネルギー源を見つけられないまま、エネルギーシフトを迫られるという難しい局面に立たされている。

エネルギー転換の波に乗れるか?〔AFPBB News〕

木材から石炭への転換過程では、辺境の島国に過ぎなかった英国が世界の覇権国として台頭した。石炭から石油への転換を機に、米国が頂点に立って君臨するようになった。

恐らく、今回のエネルギーシフトでも、世界の構造に変化が訪れるに違いない。この波に乗り損ねれば力を失い、波乗りを楽しむことができる者が次の時代の主役の座に就くことになるだろう。

「エネルギーシフト」に要する時間を考えると、ピークが2010年なのか、2020年なのかという議論は本質的な問題ではない。ビロル博士は、「この問題に対処するのは、早ければ、早いほど良い」と忠告している。IEAの「公式見解」だけを鵜呑みにし、「また、オオカミ少年が騒いでいる」とのんびりしている間にオオカミに襲われてしまった、という事態だけは避けなくてはならない。

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